天使を描いた有名な絵画作品10選|ラファエロやボッティチェリなどの名画から絵画における天使の歴史まで解説
投稿日:(金)
目次
天使を描いた有名な絵画を解説!
こんにちは!WASABI運営事務局のジョージです。
多くの芸術家たちによって描かれ、その神秘的な美しさで、何世紀もの間人々を魅了してやまない「天使」。天使は宗教的な表現だけでなく、美しさや力、正義や善意などの象徴として描かれてきました。
そんなポジティブなイメージの絵画が多い天使ですが、実は天使の不気味で怖い一面を表現した絵画もあることはご存知でしょうか?
今回は、そんな「天使」を描いた有名な絵画をイメージ別にご紹介するとともに、絵画表現における天使の歴史・意味合いを徹底解説します!
絵画における天使の意味について
多くの名画に登場する天使ですが、絵画における天使の意味合いは、宗教的な意味合いと文化的な意味合いの2つに分けられます。
そのため、作品の文脈や制作時期を踏まえながら、天使の意味合いを理解することが重要です。
天使の宗教的な意味合い
引用:キリスト教と天使
宗教的な意味合いとしては、天使は神や聖なる存在との接点を表し、神の意志を伝える使者や護衛、守護者としての役割を持っています。
キリスト教においては、天使は天国における神の使者としての役割を担っており、聖書にも登場します。また、キリスト教の伝統芸術においては、天使はキリストの誕生や受難、復活などの場面で描かれることが多く、イエス・キリストとともに描かれることもあります。
天使の文化的な意味合い
引用:ウィリアム・アドルフ・ブグロー
文化的な意味合いとしては、天使は宗教的な意味合い以外にも、様々な意味合いを持っています。
西洋美術においては、ルネサンス期以降の芸術において、天使は美しい姿で描かれ、神の慈愛や人間の憧れを表す存在として描かれることが多いです。また、西洋文化では天使は「善の使者」として位置づけられることが多く、子供たちの守護者や幸運をもたらす存在として描かれることがあります。
天使が描かれた絵画の4つの歴史的背景
初期キリスト教
引用:天使たちの真の姿、不気味な見た目の怪物
初期キリスト教期の3世紀頃から、聖書や初期キリスト教の信仰に基づいた絵画が描かれるようになり、天使も描かれるようになりました。
当時の天使は、主にイエス・キリストとともに描かれることが多く、神の使者としての役割を持ちます。この時期の天使は、人間的な姿ではなく、人外の神の使いとしての姿が描かれることが多くありました。
ゴシック時代
引用:リアル「ドラクエ」?暗黒と呼ばれたゴシック時代はどんな時代だったのか?
12世紀から14世紀にかけてのゴシック時代には、天使がより美しく、神秘的で神聖な存在として描かれるようになりました。
当時の教会は、壮大なステンドグラスや彫刻、壁画などの装飾が施され、その中でも天使は特に注目されました。描かれる天使のポーズや表情は、礼拝や宗教儀式における感動を表現するものとして、非常に重要な役割を担っていました。
ルネサンス期
引用:ルネサンス
ルネサンス期には、天使はより人間味のある姿で描かれるようになりました。
聖書に描かれる天使の描写に加え、人間のモデルを使って描かれることが多く、リアルな肉体表現や感情表現が導入され、より現実的な表現が求められるようになりました。この時期の芸術家たちは、天使を理想的な美の象徴として表現し、神の愛や慈悲を表現することが多かったです。
近代以降
引用:優しいだけじゃない!天使の変化を観ると美術史の流れがよくわかる
近代以降は、宗教的な意味合いよりも個人的な表現手段として描かれるようになりました。
また、天使という存在そのものについての神学的な考察が進み、天使に関する新たな解釈が提示されるようになりました。近代における天使の絵画には、人々の内面や感情を表現するために用いられることが多く、神聖なものからプライベートなものへと変容していきました。
天使を描いた美しい・かわいい絵画作品5選
1.「システィーナ・マドンナ」
引用:二人の天使とラファエロの≪システィーナの聖母≫
制作年代 | 1513〜1514年ごろ |
作者 | ラファエロ・サンティ |
所蔵 | アルテ・マイスター絵画館 |
サイゼリアの店内の壁にも描かれている下部の2人の天使。天使が描かれた絵画と言われて、この天使を思い浮かべた人は少なくないでしょう。
引用:二人の天使とラファエロの≪システィーナの聖母≫
この絵画は、聖母マリアが赤ん坊イエスを抱いている姿が描かれており、聖母の優雅な美しさとイエスの可愛らしさが表現されています。
天使がメインの作品ではないですが、イエスにも勝るその可愛らしさとあどけなさが印象的な作品です。
2.「春」
引用:ルネサンスの画家、ボッティチェリは「春」をどう描いたか?
制作年代 | 1477-78年 |
作者 | ボッティチェリ |
所蔵 | ウフィツィ美術館 |
こちらも脇役の天使が印象的な一枚。ルネサンス期に美の女神ヴィーナスを中心に様々な神話的要素が鮮やかで柔らかな色彩で描かれているのが特徴です。
そして上部に描かれた優美な天使はヴィーナスの子供で恋の神でもあるキューピッド。目隠しをされている状態は「恋は盲目、愛の不確かさ」を表していると言われています。
そんなキューピッドが矢を構えた先にいるのは、ヴィーナスの付き人である三美神です。一体誰に矢に当たり、恋心を抱いてしまうのでしょうか。
3.「アムールとプシュケー、子供たち」
引用:アムールとプシュケー、子供たち
制作年代 | 1890年 |
作者 | ウィリアム・アドルフ・ブグロー |
所蔵 | 個人蔵 |
この作品には、美と愛を象徴するローマ神話のカップル、アムール(キューピッド)と王女プシュケーが描かれています。
ブグローの非常に精密な描写によって、アムールとプシュケーの間に存在する愛情や幸福感を表現し、観る者の心を打つ作品となっています。
4.「眠れるプット」
引用:プット
制作年代 | 1882年 |
作者 | レオン=バジール・ペロー |
所蔵 | 不明 |
翼の生えた幼い子供が眠っている様子がとてもかわいらしいこの作品。
肌の柔らかい質感や陰影表現など、ペローの画風を代表する要素が含まれており、優美で繊細な印象を与えます。
題名にある「プット」とは、ルネサンス期に描かれた翼の生えた裸の幼児を指します。しかし中には翼の生えていないプットがいることも。
もし絵画の中に、ぽっちゃりとしたかわいらしい裸の幼児を見かけたら、それはプットかもしれないですね。
5.「トビアスと大天使ラファエル」
引用:トビアスと大天使ラファエル
制作年代 | 1788年 |
作者 | フランシスコ・デ・ゴヤ |
所蔵 | プラド美術館 |
トレビスという青年を救い出すべく、下界に降臨したラファエルの燦然とした姿が神秘的で美しい一枚。
この作品は、トビアスという青年を困難な状況から救い出すべく現れたラファエルという聖書のエピソードを題材にしています。
描かれている人物たちの優美なポーズや、豊かな色彩表現、緻密な描写技術など、デル・ヴェロッキオの芸術的才能を示す代表作の一つとされています。
ちょっと怖い?天使を描いた不気味な絵画作品5選
1.「ソドムの天使」
引用:聖書や神話を知らんと理解できんアートが多いのでエピソード別にまとめてみる
制作年代 | 1885年 |
作者 | ギュスターヴ・モロー |
所蔵 | ギュスターヴ・モロー美術館 |
町を見下ろす2人の天使。その表情と体の輪郭の曖昧さが得体の知れない不気味さを醸し出しています。
この作品は、旧約聖書に登場するソドムとゴモラの町を滅ぼすために派遣された天使たちの様子を描いたものです。手前で黒煙をあげるソドムの町と、冷酷な天使の姿が効果的に描かれています。
2.「傷ついた天使」
引用:耽美なる絵画とモノ
制作年代 | 1903年 |
作者 | フーゴ・ジンベリ |
所蔵 | アテネウム美術館 |
似つかわしくない大人びた格好の少年らに連行される天使を描いた本作品。
隠された両眼、傷つき血を流す羽根、絵画全体に流れる重い空気、目に入る全ての情報が不穏な結末を感じさせます。天使が手に持つ小さな白い花。萎れかかったそれは、僅かな希望の象徴なのかもしれません。
3.「聖痕を受ける聖フランチェスコ」
引用:聖痕を受ける聖フランチェスコ
制作年代 | 1420年頃 |
作者 | ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ |
所蔵 | マニャーニ・ロッカ財団 |
天使によって聖痕を受ける聖フランチェスコを描いた作品。右上の赤い羽根を持つ天使の姿は、怪物のそれに近いです。
天使というと綺麗な純白の翼を持つ幼児もしくわ女性をイメージしますが、旧約聖書における天使は6〜10枚の羽根で構成されており、私たちのイメージとはかけ離れています。
4.「眠りにつく天使」
引用:眠る子供の絵画13点。天使やクピド、イエス、死などの象徴として眠る無垢な子供達
制作年代 | 1608年 |
作者 | カラヴァッジョ |
所蔵 | 不明 |
眠りにつくキューピッドを描いた作品。
本来ならばかわいらしい姿で描かれることが多いモチーフですが、この作品はどうも様子がおかしいです。
不自然な体勢や筋張って硬直したような筋肉、黒くくすんだ羽根は、まるで息を引き取ってしまったように見えます。弦は緩み、愛を与えるのに絶望してしまったかのようです。
5.「骸を抱く天使」
引用:眠る子供の絵画13点。天使やクピド、イエス、死などの象徴として眠る無垢な子供達
制作年代 | 1648年頃 |
作者 | Luigi Miradori |
所蔵 | 不明 |
子供は誕生したばかりの存在として「生」の象徴とされる反面、眠る子供は「死」と結びつけられ、頭蓋骨や砂時計、花とともに描かれてきました。
この作品は、まさに「死」を表現した作品です。しかし、美しい天使の表情、招くように口を開けた頭蓋骨が、私たちに「死」を魅力的なものに見せています。
現役アーティストによる天使をモチーフにした作品
ポップなタッチで描かれた天使|鑑賞-fusion series_2-
アイコンとして描かれる天使|天使の石(2)
まとめ
引用:二人の天使とラファエロの≪システィーナの聖母≫
いかがでしたか。
今回は様々な天使の絵画、その歴史的な背景や意味合いについてご紹介しました。天使というと、その美しさや愛らしさを描いた作品が多いですが、神の使いとしての冷酷な一面や不気味な姿で描かれた天使にも、魅力があります。
美術館で天使を見かけた際は、その天使の意味合いについて考察するのも面白いかもしれませんね!
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