ロマン主義とは?その特徴や有名な絵画作品までわかりやすく解説
投稿日:(木)
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みなさんこんにちは。WASABI運営事務局のジョージです。
劇的な描写で、見る人の心を惹きつけてやまない「ロマン主義」。
ロマン主義の代表的な作品である『民衆を導く自由の女神』は歴史の教科書でみたことがある人が多いかもしれません。
この記事では、そんなロマン主義の特徴や、代表的な画家や作品をわかりやすく解説します!ぜひご参考ください。
ロマン主義とは
ロマン主義とは、18世紀末から19世紀前半にヨーロッパで、その後にヨーロッパの影響を受けた諸地域で起こった精神運動のひとつです。
それまで主流だった「新古典主義」の特徴である、合理的で派手さのない堅実な絵画とは対照的に、理想的・空想的な世界観が特徴的でした。
わかりやすくいうと、堅苦しいのはやめて「個人の主観や感情」を全面に出して描いていこう!というのが、ロマン主義のテーマといえます。
また、ロマン主義の「ロマン」は、私たちがよく使う「ロマンス」や「ロマンチック」が語源とされています。
ロマン主義に至った時代背景
ナポレオン失脚による新古典主義の衰退
引用:Pinterest
ロマン主義が興った背景としてまず挙げられるのが、ナポレオンの失脚による新古典主義の衰退です。
新古典主義には「ナポレオンの権力を示すために利用された」という背景があり、ダヴィッドやジェラールを初めとしたナポレオンお抱えの新古典主義の画家が数多くいました。
「ナポレオン=新古典主義」といえるほど結構ズブズブだったんですね。
しかし、この世は盛者必衰の理。
1814年にナポレオンはワーテルローの戦いにて大敗を喫し、完全に失脚。その後、自ら毒をあおって亡くなったされています。
そしてナポレオンの死後、新古典主義の画家たちも国を追われて亡命したことにより、新古典主義は衰退の一途をたどりました。
新たな文化の誕生
引用:Pinterest
先述のナポレオン失脚による新古典主義の衰退が追い風となり、18世紀末に新古典主義とは正反対の新しい文化が誕生します。それがロマン主義です。
これまでの正確無比な線による「ちゃんとした絵画」に対し、ロマン主義の感情がのった「情熱的な絵画」は、当時フランス革命の最中であった国民の感情に訴えかけるものがあり、爆発的な人気を誇りました。
ここから19世紀前半まで、ロマン主義は文化の中心となります。
ロマン主義の3つの特徴
1. 感情の表現の強調
ロマン主義の最も顕著な特徴は、感情の深い表現です。この時代のアーティストたちは、喜び、恐怖、悲しみなどの強い感情を、鮮やかな色彩、大胆な筆遣い、ドラマティックな構図を通じて表現しました。
2. 自然崇拝
ここでいう「自然崇拝」は自然の美しさと力強さに深い敬意を払うという意味もありますが、現実(貴族社会や近代科学)を否定し、理想を追い求めるという意味合いが強いです。
規則や法則に従って完璧な美を作ろうとした新古典主義に反発した結果、自然崇拝に至ったと考えられています。
3. 個人主義の強調
ロマン主義は、個人の感情や想像力の重要性を強調しました。この運動は、アーティストが自身の内面世界を探求し、独自の視点で世界を表現することを奨励しました。
ロマン主義の作品に良くも悪くも統一感がないのは、当時の画家がそれぞれ思い思いに描き切った結果ともいえますね。
ロマン主義の代表的な画家と作品4選
『メデューズ号の筏』|テオドール・ジェリコー
引用:Wikipedia
テオドール・ジェリコー(1791-1824)は、フランスの画家で、ロマン主義の初期を代表する人物です。彼の作品は、その生々しいリアリズムと感情的な強度で知られています。
ジェリコーの『メデューズ号の筏』は、1820年代のロマン主義絵画の始まりを告げる作品です。この絵は、フランス海軍のフリゲート艦メデューズ号の実際の難破事件を描いており、約150人の乗組員が急ごしらえの筏で漂流する様子を描いています。
ジェリコーはこの作品で、漂流中の殺人や食人などの凄惨な出来事をリアルに表現しました。賛否両論を巻き起こしたこの作品は、ロマン主義の特徴である現実的な描写と強烈な感情表現を象徴しています。
『民衆を導く自由の女神』|ウジェーヌ・ドラクロワ
引用:Wikipedia
ウジェーヌ・ドラクロワ(1798-1863)は、フランスのロマン主義を代表する画家です。彼の作品は情熱的で色彩豊かであり、動的な構図と感情的な表現が特徴です。
ドラクロワの代表作である『民衆を導く自由の女神』。これは歴史の教科書で見たことがある人が多いのではないでしょうか。
戦場に半裸の女性がいるという非現実的な描写が特徴です。新古典主義の厳格な線描法とは異なり、曖昧な線と鮮やかで繊細な色彩を用いています。
この作品はロマン主義の内面表現を象徴し、政府による買い上げと国民からの高い評価を受け、ロマン主義が広く認められるきっかけとなりました。
『マドリード、1808年5月3日』|フランシスコ・デ・ゴヤ
フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)は、スペインの画家であり、近代絵画の先駆者の一人です。
彼の作品『マドリード、1808年5月3日』は、1808年のスペイン独立戦争中のフランス軍によるマドリード市民の処刑を描いています。この絵は、戦争の残酷さと無意味さを強烈に表現しており、暗い色調と生々しい描写が特徴です。
また、晩年のゴヤは「我が子を喰らうサトゥルヌス」をはじめとする「黒い絵」という人間の闇に迫った陰鬱なシリーズ作品を描いたことでも知られています。
『雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道』|ターナー
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)は、イギリスの画家で、風景画における光と色彩の革新的な扱いで知られています。
彼の作品『雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道』は、1844年に描かれ、産業革命の象徴として鉄道を描いています。この絵は、動きとエネルギーを感じさせる強烈な筆遣いと、蒸気機関車の速さと力強さを表現しています。
まとめ
いかがでしたか。
今回はロマン主義の特徴や成り立ち、有名な画家の作品について解説しました。
新古典主義の「合理性・正確さ」の反動で誕生したロマン主義は、堅苦しい様式に囚われない画家たちの感情がノリに乗ったダイナミックなスタイルが特徴です。
美術館や美術展でロマン主義の作品に触れる機会がありましたら、心ゆくまでその魅力を堪能してください!
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