ゴヤの代表作「我が子を食らうサトゥルヌス」とは?その背景にある心の闇やその独自性について解説

投稿日:(水)

我が子を食らうサトゥルヌス

目次

みなさんこんにちは。WASABI運営事務局のジョージです。

スペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤの《我が子を食らうサトゥルヌス》は、彼の晩年の「黒い絵」シリーズの中でも特に印象的な作品として知られています。

この絵画は、神話の中の一場面を描いているだけでなく、ゴヤ自身の心の闇や当時の社会状況をも反映しています。

今回は《我が子を食らうサトゥルヌス》の背景やゴヤの独自性について詳しく解説します。

ぜひご参考ください!

ゴヤの「我が子を食うサトゥルヌス」とは

我が子を食らうサトゥルヌス

引用:Wikipedia

《我が子を食らうサトゥルヌス》は、フランシスコ・デ・ゴヤの「黒い絵」シリーズの1つとして製作された名作として知られる絵画です。

《我が子を食らうサトゥルヌス》は、ゴヤの代表作の一つとして多くの人々に知られています。この絵画は、ゴヤの独自の技法や表現力を最大限に活かした作品であり、その背後には深い物語や意味が込められています。ゴヤのこの作品を通して、彼の芸術的な才能や当時の社会的背景を感じ取ることができます。

この作品は1819年から1823年にかけて制作されました。もともとはゴヤの自宅の壁を装飾するための壁画でしたが、後にキャンバスに移されました。

制作背景と時期

我が子を食らうサトゥルヌス

フランシスコ・デ・ゴヤ《マドリード、1808年5月3日》

ゴヤは制作当時70歳を超えており、大病を患っていました。この作品は、ゴヤの暗い気分や当時のスペインの社会的背景を反映していると言われています。特に、ナポレオン戦争やスペイン内乱の影響が見られるとされています。

フランシスコ・ゴヤ

フランシスコ・デ・ゴヤ

 

フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)は、18世紀から19世紀にかけてのスペインを代表する画家です。

ゴヤの作品は、緻密な筆致と独特の色彩感覚で知られ、当時の社会や政治的背景を鋭く捉えたものとして評価されています。宮廷画家として華々しい地位を確立しつつも、その晩年には社会の暗部や人間の心の闇を描いた作品を多く制作しています。

代表作には《マハの裸婦》や《マドリード、1808年5月3日》などがあります。

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「サトゥルヌスの神話」をテーマに描かれた作品

サトゥルヌスの神話とは?

我が子を食らうサトゥルヌス
引用:waqwaq

本作のモチーフとなったのは、ローマ神話ではサトゥルヌス、ギリシャ神話ではクロノスと呼ばれる時をつかさどる農耕の神

農耕の神として人々の文明を進めたという伝説が残るほど名を馳せた偉大な神でしたが、老境にさしかかると、サトゥルヌスは自己の破滅に対する恐怖から狂気に取り憑かれてしまいました。

そして「お前は自分の子どもの1人に倒される」という予言をおそれ、5人の子どもたちを生まれるたびに飲み込んでいったという伝承を描いたのが《我が子を喰らうサトゥルヌス》です。

ルーベンスが描いた「我が子を食らうサトゥルヌス」

我が子を食らうサトゥルヌス

引用:Wikipedia

実はゴヤによって本作が描かれる約200年前に、バロック美術を代表する画家であるルーベンスによって、《我が子を食らうサトゥルヌス》が同一のテーマで描かれています。

描写の凄惨さに変わりはないですが、ルーベンスの描くサトゥルヌスは力強く、どこか理知的で神としての威厳を保っているようにみえます。

ルーベンスとゴヤ。同じテーマににもかかわらず、なぜここまで印象が異なるのか、ゴヤの独自性と内なる狂気に迫っていきます。

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ゴヤの独自性と心の闇

絵画の中のサトゥルヌスは、子どもの頭部や左腕を食べる途中で、その表情は狂気に満ち溢れています。

恐怖と狂気を強烈に表現されたサトゥルヌス。ここからはゴヤの「心の闇」と「独自性」に迫ります。

ゴヤの人間や社会への絶望が反映されたサトゥルヌス

我が子を食らうサトゥルヌス

ゴヤの《我が子を食らうサトゥルヌス》がここまで禍々しくなった背景には「不安定なスペインの社会情勢」「ゴヤが患った2つの大病」が関係していると言われています。

ゴヤは1つ目の病によって聴力を完全に失い、《我が子を喰らうサトゥルヌス》を描いていた当時再び大病を患い死の淵を彷徨っていました。そこに追い討ちをかけるようにスペインで内乱が勃発。

病によって自身の生命が脅かされる苦痛と苦悩への「恐怖」

不安定な政治、残虐な内戦の渦中で感じた人間への「絶望」

この2つの悲劇によって狂気や恐怖、人間の醜さなどゴヤの憂鬱で悲観的な内面が形成され、ゴヤの描く《我が子を喰らうサトゥルヌス》はより陰惨で残虐な作品になったのです。

修正前の「我が子を食らうサトゥルヌス」に描かれた性的描写

我が子を食らうサトゥルヌス

この絵は後世に黒く塗りつぶすような修正を施されていますが、オリジナルの状態ではサトゥルヌスの勃起した陰茎が描かれていたと言われています。

まるで、殺人に際して性的興奮を覚える性的倒錯者のような描かれ方は、もともとの神話からは大きくはずれて、画家ゴヤの晩年の厭世観と独自の人間観を反映しています。

ゴヤの「巨人」モチーフとその意味

我が子を喰らうサトゥルヌス
引用:Pinterest

神であるサトゥルヌスを巨大な怪物のように描いたゴヤですが、ゴヤの作品には、特に晩年の作品に「巨人」や「怪物」といったモチーフが頻繁に登場します。

これらのモチーフは、ゴヤの心の中の闘争や当時の社会的背景、さらには彼の個人的な経験や恐怖を反映していると言われています。

「巨人」が象徴するもの

我が子を喰らうサトゥルヌス
引用:Pinterest

ゴヤの「巨人」モチーフは、彼の内面の闘争や恐怖、さらには当時のスペインの社会的・政治的背景を象徴していると言われています。

特に《我が子を食らうサトゥルヌス》は、ナポレオン戦争やスペイン内乱など、 turbulentな時代のスペインを背景に制作されました。このような社会的背景を反映して、ゴヤは「巨人」を用いて、権力の闘争や人間の狂気、そして無常さを表現しています。

また、ゴヤの「巨人」モチーフには、彼自身の個人的な経験や恐怖も反映されていると考えられます。ゴヤは生涯を通じて多くの困難やトラウマを経験しており、これらの経験が彼の作品に影響を与えていると言われています。

ゴヤが晩年に描いた「黒い絵」シリーズとは

我が子を喰らうサトゥルヌス
引用:Pinterest

「黒い絵」とは、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤが晩年に自宅の壁に描いた 《我が子を食らうサトゥルヌス》を含む一連の絵画シリーズを指します。このシリーズの特徴は、黒を主要なテーマとした絵画が多いことから、この名がつけられました。

晩年のゴヤは聴覚を失っており、彼が「黒い絵」を描いた自宅は以前、難聴者が住んでいたため「聾の家」とも呼ばれていました。

この絵画シリーズは、鬱屈とした雰囲気と神話をモチーフとした意味深で謎めいた作品が多いのが特徴です。

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まとめ

いかがでしたか。

今回は 《我が子を食らうサトゥルヌス》の背景やゴヤの独自性について解説しました。

神話の物語とゴヤの独自の解釈が融合し、見る者に強烈な印象を与えるこの絵は、美術史上、非常に重要な位置を占めています。

この記事を通じて、作品の背後に隠された意味や背景を深く理解し、ゴヤの世界に更に触れることができたたら嬉しいです。

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