新古典主義とは?その特徴や有名な絵画作品までわかりやすく解説
投稿日:(水)
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みなさんこんにちは。WASABI運営事務局のジョージです。
重厚なテーマと正確な描写で、まさにお手本のような格式高い作品が魅力的な「新古典主義」。
近代以前の絵画というとこの美術様式をイメージする方が多いかもしれません。
この記事では、そんな新古典主義の特徴や、代表的な画家や作品をわかりやすく解説します!新古典主義の建築についてもご紹介するので、ぜひご参考ください。
新古典主義とは
新古典主義とは、18世紀半ばから19世紀初めにローマを中心にヨーロッパ全土で古典的な美術に立ち返ろうと興った美術様式です。
ここでいう「古典」とは、紀元前のローマやギリシャの建築・彫刻を指します。ミロのヴィーナスやコロッセオを思い浮かべるとわかるように、当時の美術スタイルはシンプルで正確。
派手さのない王道で重厚な、当時のアカデミーでいう「ちゃんとした絵画」を描こうというのが、新古典主義のテーマでした。
新古典主義に至った2つの背景
バロック・ロココ美術への反動
新古典主義が興った背景の1つとして、バロック・ロココ美術への反動があります。
バロック美術は、カトリック教会の信者獲得のために宗教的な場面を、激しいコントラストと表情で、オーバーに描いた作品がよくつくられていました。一方、ロココ美術では貴族や富裕層の好みに合わせた、優美な装飾や官能的な色彩表現が特徴です。
どちらも系統は異なりますが、共通しているのは「派手」だということ。この2つの派手な美術様式が200年も続いたとなると「もういいよ」という空気になるのも必然かもしれませんね。
古代遺跡発見でギリシャ・ローマに関心があつまる
引用:Pinterest
新古典主義の追い風となったもう1つの要因が、古代遺跡発見によるレトロブームです。
古代ローマの都市である「ポンペイ」と「ヘルクラネウム」の遺跡が発見されたニュースがイタリア全土に広まり、古代ギリシャ・ローマに人々の関心があつまりました。
派手なバロック・ロココ美術にうんざりしていたところに、古代遺跡ブームが重なり、新古典主義が花開くことになります。
新古典主義の3つの特徴
1. 倫理・道徳的な思想
古代ギリシャ・ローマをリスペクトした作品が制作される中で、当時の人々の規則正しく、誠実な倫理・道徳的な思想を、芸術家たちは取り込みました。
2. 秩序と調和の追求
新古典主義は美と秩序の理想化を重視します。作品や建築において、規則正しい形状や対称性を追求し、調和のとれたデザインを特徴とします。秩序が美の一部であると考えられています。
3. 神話や歴史的なモチーフ
倫理・道徳が重視されていたこともあり、モチーフは神話や歴史、肖像画などお堅いものが多く描かれました。
新古典主義の代表的な画家と作品4選
「ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト」
引用:Pinterest
最も有名な肖像画として名高い、フランスの英雄であるナポレオン・ボナパルトの肖像です。
作者はジャック=ルイ・ダヴィッドという新古典主義を代表するフランス画家です。ダヴィッドはイタリアで学び、ロココから新古典主義への変化を遂げました。
ダヴィッドはフランス革命を支持し、ナポレオンの時代には肖像画を通して熱烈に支持しました。その後、ダヴィッドはナポレオンの庇護を受け、首席画家に昇進しましたが、やがてナポレオンと共に失脚しました。
同じタイトルと構図の作品が5点存在しますが、フランスのマルメゾン城に所蔵されているこの作品が最も有名です。
「皇后ジョゼフィーヌの肖像」
引用:Wikipedia
フランソワ・ジェラール(1770-1837)は、フランスの新古典主義画家で、ダヴィッドの弟子でもありました。そのことから、ダヴィッド同様にジェラールもナポレオンの宮廷画家としてその身を置きました。
『皇后ジョゼフィーヌの肖像』は、ナポレオンの最初の妻であるジョゼフィーヌ・ド・ボアルネの肖像画です。ジェラールは彼女の魅力と優雅さを捉え、豪華な装飾と豊かな色使いで描きました。ジョゼフィーヌの優美なポーズと微笑みが印象的です。
「グランド・オダリスク」
引用:女性の魅力を極めた有名な絵画作品10選
「グランド・オダリスク」は、フランスの画家ドミニク・アングルによる傑作です。この絵画は、人体の曲線美を際立たせた裸婦像で知られ、アングルが新古典主義の巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッドから影響を受けたことが窺えます。
この作品は、アングルの緻密なデッサン技術とテクスチャー表現の巧妙な結びつきを示し、キュビズムや現代美術にも影響を与えました。
解剖学的に不自然な体勢が、一時批判を浴びましたが、アングルが表現したけだるげな美しさとオリエンタリズムの要素が作品の魅力を際立たせ、美と不気味さの狭間で当時の人々を引き込みました。
この絵画は、アングルの才能と新古典主義の影響が見事に表れた作品で、芸術史において重要な位置を占めています。
「ヤッファのペスト患者を訪れるナポレオン・ボナパルト」
アントワーヌ=ジャン・グロ(1771-1835)は、フランスの新古典主義画家で、ナポレオン時代に活躍。
グロは新古典主義のスタイルを受け継ぎ、歴史的な場面や人物を描く際にリアリズムと精密さを追求しました。彼の作品は力強く、詳細にわたるディテールと構成が特徴です。
この作品は、ナポレオンがエジプト遠征中にペスト患者を慰問する場面を描いた作品です。グロはナポレオンの人間性と決断力を称賛し、画面に感情とリアリズムを注入しました。
そんなプロバガンダ的な絵画を多く手がけたグロでしたが、次第に制作に行き詰まるようになり、セーヌ川に身を投げ、64歳でこの世を去りました。
新古典主義の建築
引用:建築知識の入門ブログ
新古典主義建築は、古代ギリシャとローマの建築様式から影響を受け、対称性、バランス、コリント式柱、トライポルス、ピロン、古典的な装飾を特徴とします。
ロココ様式であった優美な華やかな内装は影を潜め、優雅さと格式を強調し、建物の外観に美的価値を注入しています。代表的な建築物として「凱旋門」や「大英博物館」があげられます。
まとめ
いかがでしたか。
今回は新古典主義の特徴や成り立ち、有名な画家の作品について解説しました。
バロック・ロココ美術の「派手さ」の反動で誕生した新古典主義は、シンプルかつ正確なアカデミックな美術様式です。
美術館や美術展で新古典主義の作品に触れる機会がありましたら、心ゆくまでその魅力を堪能してください!
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