没入型体験鑑賞。晩年のモネを堪能する『モネ 睡蓮のとき』鑑賞レポート
投稿日:(木)

目次
皆さんこんにちは。コンテンポラリーダンサーのしょうこです!
今回は、国立西洋美術館で2025年2月11日まで開催予定の企画展、
『モネ 睡蓮のとき』
を観に行った感想をレポートしたいと思います!
日本のみならず、世界中を虜にしてやまない巨匠モネの睡蓮シリーズ。
美しく雄大な世界観に浸りに行ってきました!
平日の日中でも大行列!
今回は初めての美術館レポ!
興味のある展示は沢山あったのですが、ポスト印象派のコラムを書いたときに度々目にしていた「モネさん」の作品をどうしても見にいきたい!ということで、国立西洋美術館で開催中の展示会を取材することにしました。
この日のために入念に作戦を立ててきた私は、比較的混まないという平日昼過ぎ、14時頃を狙ってやってきました。
余裕で入れる...と思ったらまさかの、外まで続く大行列。
予想は大外れ、凄まじい盛況だったので、翌日出直すか...と思い、係員さんに「何時ころが一番空いてますか...?」と伺ったところ、
「今!今が一番空いてます!午前中とかはもっと人すごいですよ!」
まじか!!!すごいモネさん!!!
係員さんのおかげで過ちを犯さず、”一番空いている”時間に入場列に並ぶことができました。ありがとう係員さん。
並んだと言っても5分ないくらいで、かなりスムーズに入場できたので、平日昼過ぎは狙い目ですね。
エントランスには液晶パネルと大型タペストリーを用いたモネ晩年の代表的なモチーフがずらり。一瞬で空気が変わりました。
音声ナビは、アンバサダーの石田ゆり子さん。
透き通るような声が、モネの描く水面描写とピッタリな感じ。
第1章 セーヌ河から睡蓮の池へ
展示では、モネの代表作である睡蓮シリーズを中心に、彼の晩年の作品が約64点展示されています。
最初に迎えてくれたのは、彼が多くの作品の題材にしていたという、セーヌ川の作品たち。並んで飾られる、昼から夕へと表情が移り変わる水上の景色には思わずため息が出てしまうほどの美しさ。
対象のディテールは極限までぼかされているのに、引きの画角から見ると確かに水面に映る木々や太陽の絵だとわかってしまう。これが印象派か。すごい。
淡く変化していく光の繊細な描写にかなり感動してしまい、しばらく釘付けでした。
セーヌ河の朝
第2章 水と花々の装飾
続いて現れたのは装飾画の数々。
さっきまでと明確に違ってくる、作品のデカさ!!かっこいい。
鮮やかに太陽を浴びて輝く植物たちは、先ほどまでの静かな優しさのようなものとは対象に、とてもエネルギッシュな印象を受けます。
音声ガイドでは、まるで自分が小さな虫になって、草花を見上げているみたい、なんていう素敵なフレーズがありましたが、まさにその通りでした。
装飾画とは本当によく言ったもので、壁のある一定のスペースを埋め尽くすサイズ感や、高い位置に帯状に飾るための横長サイズの作品など、当時のヨーロッパではこんな風に絵画が使われていたのね、ふむふむ...と体感できるのも楽しいです。
藤
第3章 大装飾画への道
さて、ついに今展示のハイライト、第3章に進んでいきます。
ここでは、数ある「睡蓮」の中でも特に完成形と関連が深く、且つ大型の作品を9点、オランジュリー美術館の展示室にイメージを寄せた楕円形の展示空間にずらりと展示してあります。
9点の作品のうち、一つだけ異質な作品がありました。
それがこちら。
睡蓮、柳の反映
縦199.3×横424.4センチという巨大な画面のおよそ半分が欠損した状態で展示されているこちらの作品。タイトルは「睡蓮、柳の反映」。
この作品が発見されたのは2016年9月のこと。フランスの美術館関係者がルーヴル美術館内で発見し、調査を行い国立西洋美術館に情報を照会したところ、松方コレクションであることが判明。17年11月に松方家から国立西洋美術館に寄贈されたとのこと。
懸命な補修作業が行われましたが、本作品自体がかなりの大型であり、その全体を補修することは不可能だったそう。その歴史的資料価値の側面を重視し、欠損部分はそのまま残す形で修復されたとのことです。
前に立つと、異様な威圧感を感じてしまうほどの迫力。痛々しく剥がれた絵の具がこの作品が辿ってきた時の流れを想像させます。
この作品の他にも、睡蓮をモチーフとした大作の数々を見ることができるこちらのフロア。
実際にこんな風に囲まれると、まるでこの部屋には、睡蓮の庭を覗ける大きな窓が沢山開いているんじゃないかという錯覚に陥ります。「睡蓮」にぐるりと囲まれて、まさにその世界観に没入体験のできる、素敵な展示でした。
何と言ってもこのスペースだけは、特別に写真撮影が可能。
日本の美術館で作品の写真がとれるというのも滅多にない体験ですよね。
周りのお客さんには十分配慮して、是非みなさんもお写真に収めて見てください!
睡蓮
第4章 交響する色彩
睡蓮の世界観に圧倒されつつ、順路を進んで行くと、大きなスクリーンに流れる白黒の映像が。
画面には、「水の庭」を歩き、デッサンをするモネの姿が収められています。
モネは、生前既にその作品が評価され、実際に財産を手にできたことでも有名ですが、このように当時の実際の姿が映像として残っているというのも、かなり貴重ですよね。
少し荒い、コマ送りの映像の中で、おもちゃのように動く白髭の長い麦わら帽のおじいちゃん、”モネさん”の姿を記憶に収め、次のフロアに進んでいきます。
第4章フロアの様子
ここではモネの最晩年の作品群が集められていました。
加齢による白内障の症状からくる視力の低下や色覚異常、(水晶体の濁りから、全てが黄色っぽく見えてしまう症状)、光が見えなくなるなどの症状と戦いながら作品を描き続けたモネ。
その作品たちはこの展示会でこれまで見てきた作品と同じ人が描いたとは思えないほどに荒々しく、色は濁り、対象の輪郭は渦巻く色の線に掻き消されてしまったかのよう。
どうなっても描き続けるというモネの強い気迫や、見えなくなって行く恐怖や悲しみなどが物凄い勢いで流れ込んできます。
この頃、モチーフは睡蓮の咲く池から、庭に掛かる橋や柳の木々が多く使われるようになっていきました。
睡蓮の連作までの作品に見られた光の繊細さや美しさなどはなくなったように見えますが、同じイーゼルから時間ごとに移り変わる景色を連作で描く手法や、クローズアップでは見えない全体像が、引きの画角からは確かにこの景色だ、とわかってしまう技術は健在で、
むしろその味わい深さが増しているような感じがしました。
彼の新しい作風は、後進の画家たちに強く印象を与えます。
エピローグ さかさまの世界
この展示会を締めくくるのは「枝垂れ柳と睡蓮の池」と「睡蓮」の2枚。
「大勢の人々が苦しみ、命を落としている中で、形や色の些細なことを考えるのは恥ずべきかも知れません。しかし私にとってそうすることが悲しみから逃れる唯一の方法なのです」。
モネは第一次世界大戦休戦の機に、作品の一部をフランス国に寄贈したいと申し出ます。
その中の一作が「枝垂れ柳と睡蓮の池」。
モネは頭を垂れるように池の水面に向かって立つしだれ柳を、悲しみや服喪を象徴するモチーフとして描いたと言います。
この2枚の作品の前で立ち止まるお客さんたちの表情が、個人的にとても印象的でした。
左:「枝垂れ柳と睡蓮の池」 右:「睡蓮」
おわりに
世界的に大人気で、とても美しい絵をかいたモネさん、というイメージを持って見にいった今回でしたが、
1フロア1フロア見ていくうちに、彼の研究者の如き緻密さ、しつこい程に同じモチーフを描き続ける耐力、研究心。そして病により到達せざるを得なかった新しい表現の境地まで、大画面の迫力とともにその時代の風や彼の心に見えていた景色を垣間見ることができました。
美術史の一時代を、独力で切り開き、生涯に渡って自身の創作と向き合い続けた巨匠、モネ。その人生の変遷と共に移りゆく「睡蓮」を、皆さんも是非体感してみてください。
『モネ 睡蓮のとき』
会期: 2024年10月5日[土]-2025年2月11日[火・祝]
開館時間:9:30~17:30(会期中、金・土曜日は~21:00)
会場企画展示室観覧料:
一般2,300円、大学生1,400円、高校生1,000円
前売券:
一般2,100円、大学生1,300円、高校生900円
詳細はこちら
https://www.ntv.co.jp/monet2024/
余談
ちなみに、国立西洋美術館のある上野駅には、弊社とJRさんと共同で行った壁画事業で、NiJi$ukeさんの描く壁画を見ることができます!是非こちらも寄り道して見てくださいね。
NiJi$uke JR×NOMAL ART COMPANY 上野駅構内wall art