絵とは、人生の素晴らしき彩り【アーティストの制作現場 Vol.09】

投稿日:(金)

絵とは、人生の素晴らしき彩り【アーティストの制作現場 Vol.09】

目次

2022.3.4.UPDATE

絵とは、人生の素晴らしき彩り

はじめまして、油彩テンペラ画家の白川美紀です。

WASABIのコラムに掲載の機会をいただき、感謝です。


読んで下さる方々に"軽やかな何か"をお届けできればとても嬉しいです。


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 画家になったきっかけ

父は建築学科出身。デッサンの授業で絵に目覚め、社会人でも趣味で油絵を描いてました。勤務先の絵画サークルや絵画教室で交流や展覧会を楽しみ、数多く絵を飾って喜んでました。


一方、母は書家で、2メートルを超えるの巨大な書に作品を書いてました。展示前に大量の墨液を電動墨擦り機で作り、大きな紙に立って懸命に書く姿を覚えてます。


休日の行き先は書道展、美術展がほとんど。帰りのショッピングはプロ向けの書道用品店、漆器や伝統工芸品のお店と少し子供にはかなり渋めだったかもしれません。


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私の幼い頃の夢は詩人か小説家。読書や詩作が大好きだったので、文章にイラストを添えた手作り冊子を作った記憶があります。


転機は高校3年。油絵の画材一式をプレゼントされました。イラストを見た知人が、突然W&N社(*)製の本格画材をくれたのです。


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*W&N社とはWinser&Newton(ウィンザーアンドニュートン)という1832年に創立された著名な画材メーカー。化学者による開発を強みとして耐久性に優れた絵の具を販売している。色彩の豊かさもまた世界中のアーティストに愛され続けてきた理由の一つである。



「じゃあ絵を習おう」と通ったのが、たまたま美大受験の予備校でした。その頃、コンクールで自画像で受賞し、生まれて初めて絵が評価され、一気に絵にのめり込みます。


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コンクール受賞の絵の画像



それからは夢中で美術を学び、イタリア留学をし、絵を販売したり、テレビ番組に絵で美術協力と、気がつけば人生の大半を絵の世界で過ごしてきました。


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『咲いて散って、また咲く』テレビ朝日「刑事7人」作中の重要な小道具としてこの絵が登場



表現したいもの、テーマ

「大切な誰かと見つめ合ったときの、永遠のような一瞬。」

「花びらが舞い落ちる数秒。」


目に見えない美しい時間や感情があります。

私はそれを表現したいと思ってます。


物事は「存る(ある)」と「存在しない(ない)」の2つではなく、その間に「存る(ある)かもれない」から「存在する(ある)だろう」という曖昧で繊細なものを感じます。


例えば、"風"は目に見えないけど、飛行機が飛んだり、カーテンが巻き上がることで風を見る(感じる)ことができます。


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白川美紀『VOLA!』



"時間"も目に見えませんが、古い遺跡の断片には美しい経年劣化(傷や色褪せ)があり、そのリアリティは時の重みがあります。



下の『曇りのち晴れ』という作品は、ひだまりの鳩から絵の構想が湧きました。


3羽を丹念に描き込むと、馴染みの公園ではない、特定の場所や時間を超えた別世界に運んでくれます。一緒に描かれているのは、時計の部品です。


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白川美紀『曇りのち晴れ』



こちらの作品の背景には金箔を用いています。見る角度によって表情を変え、時間の経過とともに渋みも加わり、絵にさらなる深みを添えます。

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白川美紀『Il vento di primavera -春の風は-』



1秒の間を永遠に行き来するような不思議で軽やかな感覚。

「もしかしたらそうかもしれない」という現実と非現実の隙間に、大きく広がる自由を感じるのです。

想像の無限のはばたきともいえるかもしれません。


このような目に見えない美しい時間や感情こそ、芸術が表現できる領域なのかもしれません。



画法について

私は"テンペラ/tempera(油彩テンペラ)"という古典画法を用いてます。


元々、ゴッホなどの印象派を入り口に美術と出会いましたが、深く学ぶ中でボッティチェルリをはじめとする15世紀のイタリア絵画に出会い “西洋画”のイメージが大きく変わりました。


この時代の画家たちは、テンペラの画法を用いて描いていました。これは、キャンバスにあたる板も絵の具も手作りという非常に手間と時間、そして根気のいる画法です。


何層も絵の具を重ねる工程も、まるで"時間の層"を積み重ねるようで、赤や黒という一見単純な色も複雑な色味になります。


また展色剤(のり)として本物の卵を使うのも特徴の一つ。顔料(色の粉)と卵を混ぜて色(テンペラ絵具)を作り、細い筆で板に描くのです。


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せっかちな私には無理かと思いながら、数ヶ月かけて完成した作品の重厚感や達成感がすごくて。


白川美紀『ブーケはCadmium yellow』制作風景1~3↓

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針の先のような"面相筆"で少しづつテンペラ絵の具をのせる作業は、無機質なはずのモノに意思や命が吹き込まれる様に感じます。


白川美紀『Botaniskull-輪廻転成-』制作風景1~3↓

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時間を積み重ねていくテンペラ画法。その魅力をお楽しみいただければ嬉しいです。



みなさまへ伝えたいこと

コラムを読まれている方も、仕事や、育児や介護、その他で忙しくお過ごしでしょう。利益、効率、、社会で求められるものと絵、ARTは正反対に感じるかもしれません。


でも、一見無駄=非効率とされがちな“感動する”、この心が心地よく揺さぶられる時間があれば、もっと豊かな毎日を過ごせます。


毎日の中の、ほんのちょっとでいい、静かに絵やARTと向かい合うのはいかがでしょうか。



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白川美紀『青い鳥A』



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白川美紀『青い鳥B』



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白川美紀『金の心臓-Un cuore d'ore-』






本や映画をみた時のように。

旅に出た時のように。

大切な誰かのことを考えるように。


きっと絵の奥にある豊かで美しい広がりが静かに心を満たしてくれると思います。


心がとても満たされているのに気づくでしょう。

私の描いた絵が、誰かの日常を今よりさらに豊かにできますように。




ARTIST DATA

白川美紀

 

油彩テンペラ(古典絵画技法油彩)でちょっぴりシュールな非日常を表現。イタリア留学後、銀座の画廊や百貨店などで個展15回、グループ展多数。現在は仙台を中心に活動中。

 


作品一覧はこちらから

白川



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