都築崇広『合板都市 Plywood City』レポート

投稿日:(金)

都築崇広_アーティスト

目次

2022.3.11.UPDATE


東京、曙橋。

A2出口を出て、商店街の中を歩くこと5分。




お目当てのSYP Galleryの看板が現れる。




看板の手前を左に曲がり、お寺へと続く私道をゆく。




すぐに辿り着いた。







ガラガラと引き戸を開け、涼しい室内に入る。



目の前広がるのは、都築崇広による3つの作品。



今回作品のベースとして使われているのは

構造用の合板(ラーチ)と、内装でよく見かけるようなプリント合板。



木の香りが鼻をくすぐるのはそのせいだ。



入口のすぐ左側に置かれた作品説明の用紙とポストカードを手に取り、

作品の前に立つ。


ででーん。




まずは1作目。


木の板に貼り付けられているのは、誰もが一度は見たことがあるであろう、マンションの広告チラシ。

昔はチラシの裏が白かったから画用紙代わりにしてたっけ。


そんな広告は、何も無造作に集められた訳ではないようだ。





これは日差しが照りつける日中の高層マンション。





こっちは高層マンション×戸建てのよくある街並み。




圧倒的都心感。で、夜の風景かな。




戸建てが並ぶ住宅街。





「現代の洛中洛外図みたいな感じです」

と、アーティストの都築さんは表現した。



時空を越えた鳥瞰的なその考えは

住人の日々の営みを讃えるでも蔑むでもなく

ただそこに在るものとして捉えているようにも感じられた。


それって案外難しいのよね。


都心は「人が冷たい」とか「緑が少ない」とか

何かと敬遠されがちだけどさ

喪失と再生を繰り返すのはどこでも同じじゃない。


今は人影のない山郷だって

別の命が住んでいるんだろうし。



そういえば昔、五箇山(富山県)を訪れたとき

雪が積もる山々の壮大さに驚いたな。

「豊かな自然とはこのことか!」

と肌で実感したの覚えている。




頭の中で、山々と住宅の連なりを重ね合わせてみる。


「人間は家に住む」

そんな当たり前のことを作品から学んだ。





お次の作品。




一都三県を結ぶ国道16号線。


この道路を利用する人はよく知っていると思うが

どこを通っても車から見える景色はほとんど同じである。


自分が運転しているはずなのに

流れるプールのように

勝手に景色が遷移していくような感覚さえ覚える。



プリント合板の木目を眺めていると

次第に砂漠に迷い込んだ気分になってくる。




上下左右どこを見ても

同じお店ばかり。


あれ...自分の現在地が分からなくなってきたぞ...


信じるべきはカーナビか、自分の心か...



無論カーナビであるわけだが

「ちょっと歩みを止めたいな」と思っただけなのに

それを許さない、厳しい作品だなと勝手に思った。





3つめ。




縦長の作品。

広がるのはピカピカに輝く看板ばかり

これまた国道16号線。


少し見辛いのですが

看板の部分がキラキラしています。

そこにはマニキュアが塗られているそう。



煌々と照りつける月をよそ目に

看板とは我が物顔で周辺地域を見下ろすものだ。


「電気の無駄遣い」

だなんて言われてはいるけれど

夜道を歩くときその眩しさに安堵している人々は

どれほどいるのだろう。



さっきまでは砂漠に迷っていた自分。


この作品を眺めていると

どこへ向かうべきか、分かる気がした。



帰りに寄ったカフェの内装が

偶然にもプリント合板で仕上げられていた。




同じリズムの繰り返しに囲われた中で

先の読めない動きをしているのは

人間だけであった。



あっ。そうか。


複製されたイメージがいくつも折り重なったこの世界では

人間こそが新たなパターンを生むことができるのか。




このことに気がついたとき私は

個展を通して感じたアーティストの視点


すなわち

対象物を『ただそこに在るもの』として捉える冷静さ


それが自分にも乗り移ったような気がした。






※現在この個展は終了しています。

(開催期間:2020年7月2日~7月19日)

\[SYP Gallery]次回個展情報/

 

内藤忠行《W3》

7月30日(火)~8月16日(日)(木~日の13時から20時まで営業)

★オープニングレセプション: 8月1日(土)18時~20時


場所:東京都新宿区住吉町10-10

連絡先:info@sypgallery.com

詳細: https://sypgallery.cargo.site/


ご興味のある方はぜひ足をお運びください!








BORDERLESS - LAKE 2311201
BORDERLESS - LAKE 2311201

BORDERLESS - LAKE 2311201
大橋 澪
¥78,000
smile?
smile?

smile?
shu
¥15,000
カエルの合唱
カエルの合唱

カエルの合唱
渋田薫
¥66,000
Beyond- 彼方 no.3
Beyond- 彼方 no.3

Beyond- 彼方 no.3
Yuri Udagawa
¥58,000
湧き出る奇跡
湧き出る奇跡

湧き出る奇跡
藤 理沙子
¥352,000