グラフィティアートとは?意味や特徴の紹介と日本で見れるグラフティアート5選
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近年、ファッションブランドとのコラボやテレビで取り上げられることも多いグラフィティアート。ホップな表現を用いた作品は、どこか興味をそそりますよね。そこで、今回はグラフティアートについて解説していきたいと思います。
「バンクシー以外のグラフィティアーティストを知りたい」
「日本でグラフィティアートを見たいけど、どこにあるのか分からない」
という方に向けて、グラフィティアートで活躍する作家や日本で見れるグラフティスポットまで紹介します。もっとグラフィティアートについて知りたい方にはオススメです。
グラフィティアートとは?
「グラフィティアート」とは、スプレーやフェルトペンなどを用いて、壁や電車など公共空間に描かれる絵や文字を指します。今までは壁の所有者や管理者の許可を得ず、ゲリラ的に描かれることが多かった為、悪質な落書きとしての印象が強かったグラフィティアート。しかし、近年では日本におけるバンクシ―の認知度向上もあり、アートとしての側面も注目されるようになりました。
グラフィティアートを見れる場所は主にロンドンや東京、ニューヨークなどの都市部です。日本ではスプレーで文字を書いたような様子が印象として強いですが、外国ではしっかりと絵として描かれていることが多く、実際に見た時はクオリティの高さに驚かれる方も多いでしょう。
こちらは私が2018年にイタリアに旅行した時に撮影した写真です。
ただ文字が書かれているだけでなく、絵もしっかりと描かれている様子に、「落書き」ではなく「作品」のような印象を受けました。「これが落書きとして消されてしまうのはもったいない」と感じた点が今日のグラフィティアートの始まりと言えるのかもしれません。
グラフィティアートの歴史
その起源は古代から
そんな複雑な事情があるグラフィティアートですが、日常に近いアートだったからこそ、意外と歴史は深いものになります。
それは遡ること古代から始まります。ヘレニズム時代・ローマ帝国時代・初期キリスト教時代の遺跡として有名なエフェソス遺跡には、古代のグラフィティアートと思われるものが現存します。遺跡の壁には文字やマークのようなものが描かれており、現代におけるグラフィティに近いものと考えられているからです。
そもそも、グラフィティという言葉の語源はイタリア語の「graffio」からきていて、「引っかく、引っかれたもの」等の意味を持ちます。古代では尖ったものやチョーク、石炭などを使って壁を引っかいて文字を描いたことが由来とされている為、エフェソス遺跡の文字やマークもグラフィティと解釈できるのです。
しかし、これは都市に住んでいた人が便宜的に書いたものとも言えます。そしてあまりにも日常的であったからこそ、アートとして残らなかったのでしょう。
アートとして注目を浴びるグラフィティ
そして実際にアートとしてグラフィティが受け入れられ始めたのは、1960年代のアメリカだと言われています。ペンシルベニア州フィラデルフィアの街中で通称Cornbreadと彼の仲間たちが、壁に「タギング」(スプレー等を使って自分の名前を描く)をするようになったことが始まりです。
70年に突入すると、それらのグラフィティ運動はニューヨークに移り、数多くのグラフィティライター達が地下鉄の電車などに自分の名前を書き始めました。それがブルックリンやクイーンズ、ダウンタウンなど他の地域に広がり、様々なスタイルやアイデアが生まれたのです。
80年代にはそんなグラフィティで埋めつくされた電車を解消するべく、監視カメラの設置や法整備が進められました。そんな中で、所有者に許可を取り合法的に描くライターも生まれます。
法整備によって、グラフィティを書くことをやめる人もいれば、合法的に様々な場所で活動する人も増えました。後ほど紹介するバリー・マッギーもその1人で、街なかでグラフティを書いていた所をギャラリーのオーナーに声をかけられたことで、アートの文脈でグラフティを行うようになったのです。
現在では、ストリートだけでなく、アートやファッション、デザインにもグラフィティが取り入れられるようになり、各分野で世界的に活躍するライターも増えてきました。
さらに、上記のようなハイブランドがグラフィティとコラボしたことや、アート界におけるバンクシーの活躍も重なり、グラフィティアートは今日のような知名度を得たと言えるでしょう。
日本で活躍するグラフィティアーティスト
グラフィティアートと言えば、真っ先に名前が挙がるのはバンクシ―です。しかし、バンクシ―以外にもグラフィティアートで活躍している作家は数多く存在します。そこで、ここからは日本で活躍しているグラフティアーティストを紹介します。
ギャラリーや芸術祭での展示で精力的に活躍しているアーティストをメインで紹介するので、気になる作家がいれば、ぜひ見に行ってみましょう。
DIEGO
参照DIEGOは東京で活躍するアーティストです。彼は大学や専門教育を受けていないが、独自の視点で都市を描くことでアーティストとしての評価を受けています。最近では、グラフィティアートだけでなく、絵画やインスタレーション、SIDE COREの一員としての幅広い作品制作にも取り組んでいます。
バリー・マッギー
1966年サンフランシスコ生まれ。現在もアメリカのサンフランシスコを拠点として活動しているアーティストです。青年時代にサンフランシスコ各所で壁画の制作を始めました。そのことがきっかけでギャラリーのオーナーに見出され、展示の契約を獲得します。
それによってアートの世界において、グラフィティそのものが自己表現だけでなく、アートとして認識され始めたのです。このことからもバリー・マッギーはグラフィティアートの道を切り拓いた人物と言われています。また、日本ではあいち2022で展示を行うなど、精力的に活動中のアーティストです。
大山エンリコイサム
参照1983年に東京で生まれ。2007年に慶應義塾大学卒業、2009年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。従来のグラフィティライターとは異なる経歴が特徴的です。彼の作品はエアロゾル・ライティングを再解釈した「クイックターン・ストラクチャー」というモチーフを元に制作を行っています。
制作に対する理論も持ち合わせた作家のため、『アゲインスト・リテラシー』、『ストリートアートの素顔』、『ストリートの美術』、『エアロゾルの意味論』などを著作を執筆している点も特徴的です。
日本で見れるグラフィティスポット
グラフィティアートで活躍するアーティストを知ることで、直接作品を見てみたい!と思う人も少なくはないでしょう。
美術館やギャラリーで鑑賞できる作品もありますが、せっかくなら街中で見たいですよね。そこで、ここからは日本で見れるグラフィティアートのスポットをご紹介します。特に都内のグラフィティアートを中心に紹介しているので、都内にお住まいの方はすぐに見に行けるでしょう。
天王洲アイル
参照東京の天王洲を舞台に2019年からの継続作品を含めた計10箇所、10人のアーティストによる壁画や立体アートを展示しているエリア。国内最大級のプロジェクトであり、先ほど紹介したDIEGOやARYZ、淺井裕介などが継続展示の作品として展示されている。
また、新規展示作品では日比谷 泰一郎など勢いのある作家の作品を展示している。
MuralCityProject
参照東京の高円寺で行われているこのプロジェクトでは9点のグラフィティアートが街中に展開されている。このプロジェクトの特徴は一か所のエリアに作品が集められているのではなく、街中に拡散するように展示することで高円寺という町全体をアートのようにしている点だ。
9点それぞれが別の場所にある為、宝探しのように街中を歩いて見れるのが魅力だ。
うめきたガーデン
WHOLE9(ホールナイン)によって制作されたグラフィティアート。工事中のうめきたガーデンに設置されたアートが、無機質な工事中の壁を彩る。WHOLE9は他にも、中野駅や建物の壁画、オフィスの壁に描くアートまで、幅広く活躍している。
デザインフェスタギャラリー原宿
原宿にあるデザインフェスタギャラリーは原宿らしいポップなグラフィティアートに出会える場所だ。また、施設の中では公募型の展示なども行っており、一度で様々なアートに出会える所が魅力だ。
エドガウォール・ストリートアートガレージ
江戸川にある建設会社のガレージをFin DAC、ダン・キッチナー、Himbadといったアーティストの作品が見られる空間にした改装したプロジェクト。下町の風情が残る街で、世界的なアーティストのコラボレーションは必見。
また、場所は一般的な建設会社の為、平日17時までに見学に行けると良いでしょう。
作品か、器物損壊かの賛否両論
しかし「いくら消されてしまうのはもったいない」と感じたとしても、壁や空間の管理主や所有者の許可を得ずに描くことは違法行為であり、器物破損等の罪に問われるリスクがあります。そして現在でもゲリラ的に描かれたグラフィティアートのほとんどが消されたり、撤去されることが多いです。何故なら、グラフィティアートにおいて何をどのように「アート」と規定するのか?判断基準が曖昧だからでしょう。
例えば、2019年1月に東京日の出駅付近にある防潮扉で発見されたバンクシ―らしきネズミの絵は、ネズミが描かれた扉のパネル部分を取り外すことによって作品を保護、展示する動きとなりました。
都はこの絵の一般公開に対して、「公共物への落書きは決して容認できるものではありませんが、地元の方々からは、地域資源として本来の場所に戻すか、あるいは近い場所で保管し、多くの都民が見学できるようにして欲しい旨の要望があり、日の出ふ頭の賑わい向上にも資することから、絵の描かれた防潮扉が設置されていた場所に近い同ふ頭において展示することとしました」と経緯を説明しました。
公共物への落書きは許せるものではないが、バンクシ―と思われる者が描いた絵は地域資源として保管したい…そんな相反する思いからの結果に今日のグラフィティアートが抱える問題を考えさせられます。
落書きか?作品か?揺らぐ見方の中でアートを考える
いかがでしたか?
バンクシーの印象が強いグラフィティアートですが、日本で活躍している他の作家や実際に作品を見に行ける場所を知ることで、より興味が湧いてきますよね。
街の中で見れる作品を通して、美術館とは違う鑑賞体験ができるかもしれません。
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