対話型鑑賞とは?やり方やしっかり学べるオンライン講座まで徹底解説

投稿日:(火)

対話型鑑賞とは?やり方やしっかり学べるオンライン講座まで徹底解説

目次

2023.1.31.UPDATE

こんにちは!関西在住アーティストのにしはるです。

今回は、アート作品を鑑賞する際に使われる「対話型鑑賞」について、ご紹介したいと思います。
最近では、アートだけでなくビジネスの分野においても注目が集まっている対話型鑑賞。

気にはなっているけど、そもそもどんなものなの?
どうやってやるの?
どこの美術館でやっている?

などなど、対話型鑑賞に興味はあるけど、まだやったことない方におすすめの記事です。

対話型鑑賞とは?ビジネスパーソンも注目するワケ

対話型鑑賞とは?やり方やしっかり学べるオンライン講座まで徹底解説

対話型鑑賞とは、1980年代半ばにアメリカのMoMA(ニューヨーク近代美術館)で開発された作品の鑑賞方法の1つです。作品鑑賞とは本来であれば、作品の近くに掲示されているキャプションなどを元に作品を鑑賞します。しかし、対話型鑑賞では美術の知識ではなく、その場で感じた感想や想像を元に参加者と対話を行う点が特徴です。

このような鑑賞方法を英語ではVTS(Visual Thinking Strategies)と言い、当初は子ども向けのアートの鑑賞法として活用されていました。

それでは、なぜ現在は大人であるビジネスパーソンからも注目を集めるようになったのでしょうか?

なぜ注目されているのか?

対話型鑑賞とは?やり方やしっかり学べるオンライン講座まで徹底解説

今日、対話型鑑賞が注目されている理由は理由の一つに1枚の絵画を元に対話を行うことで、想像力や思考力、考えを人に伝える力、話を聞く力といった、ビジネスにおいて必要な力を伸ばすことができると言われているからです。そのため、現在では企業の研修に導入するケースも増えています。

それらは正解のない時代と言われている現在で、それぞれのビジネスパーソンに問題解決能力やコミュニケーション力といった多角的な能力が必要とされている背景があるからです。

対話型鑑賞では、絵を通じて作品の物語や世界観を想像すること、それを相手に分かりやすく話すこと、さらに相手からも話を聞くことで、自然と考える力や伝える力の訓練が出来ると期待されています。

対話型鑑賞のやり方

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基本的に対話型鑑賞は複数人のグループで実施します。具体的なグループ構成としては10名以下の参加者に対して1人のファシリテーターがつき、司会者としての役目を担う構造です。

対話型鑑賞におけるファシリテーターはただ話を進行するだけでなく、参加者の話を引き出したり、参加者同士の対話を促進する役目もあります。また、その時々によって参加者に意識してもらうことやルールを提示することで、より参加者の思考や対話が進むように促します。

このように、対話型鑑賞は決められたパッケージのようなものではなく、その時々のファシリテーターや参加者によって変化するものです。そのため、細かなテクニカルや手法などはいくつか存在しますが、ここでは一般的な対話型鑑賞の流れについて4段階で説明したいと思います。

1.作品をじっくり見る

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まずは、目の前にある作品をよく鑑賞してみましょう。例として下記の「西国三十三所巡礼画巻」の絵を元に観察していきます。

対話型鑑賞とは?やり方やしっかり学べるオンライン講座まで徹底解説
(西国三十三所巡礼画巻 中沢弘光 画)

まず、この絵にはお屋敷があり、周りに山や林のようなものが見えます。全体的に茶色がめだつことと薄めの配色のため、少し寒さを感じる秋から冬にかけての時期に描かれたものかもしれません。

そして作品の左側手前には、荷物を抱えているような人が2人描かれています。2人とも腰が曲がって荷物が重たそうですね。恐らく、長距離で何かを運んでいると考えると、中央に描かれている建物は関所のような場所かもしれません。

秋から冬にかけての肌寒い日を切り取った日常的な作品の様子に、昔の人の視点や息遣いが感じられそうですね。
このように、普段は絵画をじっくり見ない方でも、

・描かれているものはどんなものがあるか?
・全体的にどんな色をしているか?

といった分かりやすい所から1つ1つのパーツを確認するように観察していくことで、それらのイメージが全体の印象として繋がっていきます。

そして、この時に重要なのは、自分が感じたこと、考えていることが正解かどうか、考えたり追求しないことです。

ちなみに、この絵も左上側に「岩間寺」と書かれているので、恐らく作品中央の建物は関所ではなく、お寺なのでしょう。しかし、ここでは建物がお寺か関所なのかが重要なのではありません。作品から感じた印象で、なぜこれが関所に見えたのか、考えた過程が重要なのです。

2.作品から得た印象をなぜそう感じたのか考える

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作品をじっくり鑑賞した後は、作品にはどんなものが書いてあったのか、自分がそこからどのように感じたのかを思い返してみましょう。この時は同じ参加者と会話しながら鑑賞するのではなく、じっくりと1人で鑑賞しましょう。必要な人は感じたことをメモに書きながら鑑賞しても良いでしょう。

先ほどの例から考えてみると

・森の中にある関所
・日常に近い質素な風景

のような印象を受けたということです。

それでは、なぜ上記のような印象を受けたのでしょうか?

ここからは、自らが作品に抱いた印象から、自分のことについて考える段階に移ります。例えば、「日常に近い質素な風景」と感じたのは何故なのか?自分の中で掘り下げてみます。

まず、日常的だと感じたことには色の問題が大きいと考えました。そもそも、普段目にする日本画は青や赤などの鮮やかな色を使用した作品が多いため、その対比として感じられたからでしょう。
そして、その対比から「日常的」という言葉に行きついたのはミレーの「落穂拾い」のイメージがあったからでしょう。

さらに、茶色の木々からは枯れ木を連想していたことから、季節を秋から冬にかけての時期だと推測したのだと思います。

鮮やかな日本画
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ミレーの「落穂拾い」
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ソース

このように、改めて絵画から得た印象を、どんな思考プロセスを元にそう感じたのかを、考えることで、自らの思考の原点や無意識的に影響されていた情報に気付くことができます。

3.そのことについてオープンに話す

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ここからは、今まで作品に対して考えてきたことを他の参加者に話します。単純に絵から抱いた印象だけを語るのではなく、なぜそんな風に感じたのか、人によっては自分のルーツから話をするような人もいるでしょう。

しかし、この場ではあまり恥ずかしがらずにオープンに話すことが重要です。なぜなら、考えの根拠となる意見を提示することで、聞いている側の人はよりその意見に対して納得し、相互に対話が出来るような状態となるからです。

そして、この場では自分の考えをただ話すだけでなく、同じ参加者に伝わるような話し方を意識して、話してみるといいでしょう。そうすることで、自分の中にある考えをしっかりと相手に伝えるトレーニングになります。

4.他の参加者の話を聞く

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対話型鑑賞では、絵を通じて自己と向き合い、それを他者に話すことを行います。場合によっては、それが毎日一緒に働いている同僚かもしれませんし、今日初めて出会った人かもしれません。

そんな中で、自分の思いや考えを堂々と話すことは、とても大変なことです。そのため、自分だけでなく、他の参加者の話を聞くときも否定をせず、オープンに話を受け入れましょう。

対話型鑑賞では、この意見が正解かどうかを決めるのではなく、それぞれが考えた意見を元に対話を行うことが目的です。ですので、他の参加者の意見に少し違和感を持っても、それが一体どういうことなのか?なぜ、自分が違和感を抱いているのか、深く考えてみることで、より質の高い対話型鑑賞となるでしょう。

もっと知りたい人には、対話型鑑賞が出来る講座やイベントをご紹介

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基本的に対話型鑑賞は複数人で行うもの。そのため、美術館などで定期的に対話型鑑賞を行っている場所を知りたい人もいるでしょう。

現在は1日限りの対話型鑑賞を定期的に行っている場所、団体はいないのが現状です。しかし、都内の美術館ではイベントとして開催していた実績があるため、気になる人は美術館のサイトなどをチェックしてみましょう。多くの施設の場合は大きなイベントごとの企画の一環として対話型鑑賞を実施していたため、イベントごとが増える春や秋がねらい目といえます。

また、参加者として参加するだけでなく、ファシリテーターを養成する講座として対話型鑑賞を行っている所もあります。複数回の講座を通じて対話型鑑賞のファシリテーターを養成する主旨の為、もっと作品を通じて思考を深めたい方や実際にファシリテーター役を務めたいと思っている方におすすめです。

京都芸術大学「大学生と学ぶ 対話型鑑賞ファシリテーション講座」

毎年、全8回の講座から構成されている京都芸術大学のファシリテーション講座はオンラインでも受講が出来る点が特徴的です。

この講座では、VTSを発展させた形で開発された「ACOP(Art Communication Project)」を用いて講座が進行していきます。ACOPでは、作品の情報を一切与えないVTSと異なり、作品の情報や背景と一緒に、より豊かな鑑賞体験を行うことを目指しています。

この講座では、ACOPの基本から実施者としてのファシリテーション技術まで、理論と実践の両面で本格的に学ぶことができる講座です。

講座URL:https://www.kyoto-art.ac.jp/events/2298

ARDA「対話型鑑賞ファシリテーター養成講座」

NPO法人 芸術資源開発機構 (ARDA)が行うファシリテーター養成講座は3日間の対面ワークショップと3時間のオンライン講義の視聴で、短期間で集中的に学ぶことが出来ます。

短期間で集中して学べる講座になっているので、都内にお住まいで速くしっかりと学びたいかたにはぴったりです。

講座URL:https://www.arda.jp/dialogue/general

まとめ

この記事では一般的な対話型鑑賞のやり方やファシリテーターの養成講座を紹介しました。最近では、対話型鑑賞以外にもアート思考に触れられるワークショップなども展開されています。

WASABIでは社内のウォールアートを決定する時に会社の個性を知ることができるワークショップを実施しています。ぜひ、気になる方は詳細をご覧ください。

WASABIが実施するアートワークショップについてはこちら

 

 

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