服飾デザイナーを経て、単身ベルリンへ。日常をおしゃれに切り取るイラストの目指す先とは?【イラストレーター・yumitaniguchiインタビュー】
投稿日:(金)
目次
アンニュイで、リラックスしていて、でもおしゃれな女の子のイラストの数々。 三重県出身・ベルリンでの生活を経て現在京都にアトリエを構えるyumitanuguchiの素顔とは?
yumi taniguchi
1984年三重県生まれ。服飾専門学校卒業後、テキスタイルテ?サ?インなと?の仕事を経てト?イツ・ヘ?ルリンて?生活。アートマーケットやホテルなどで展示経験を積み、帰国。現在は京都を中心に活動中。
谷口さん、今日はよろしくお願いします!今、吉祥寺のカフェ(and kichijoji)にいるのですが、現在個展期間中ですね。(※現在は終了しています)
スモーキーな色使いが素敵です。とにかく「わ、おしゃれ!!」って女の子が心踊るようなアートですよね。
ありがとうございます。
服飾の世界から、アートの世界へ
谷口さん、ご出身はどちらなんですか?
三重です。四日市とか、鈴鹿サーキットの近くですね。
小さい頃から絵を描くのは好きだったんですか?
洋服を人形に着せたり、女の子の絵を描いたりとかは好きでしたね。それで、服飾関連の仕事を目指して専門学校に行きました。その頃から絵を描くことに興味があったので、テキスタイルのパターン制作をしてみたりしてました。
では、絵は完全に独学で?
いえ、大阪のクロッキーデッサンのスクールに週2で行ってました。絵を描くことに興味がありましたね。校長先生がELLEの冊子の挿絵を描くような、おしゃれな方でした。
なるほど。スクールは通ってよかったですか?
そうですね。服飾の会社に入社するときも、そのスクールで描いた時の作品を見せたら気に入ってくれて、テキスタイルのデザインもですけれど、スタイル画を描いたりできるようになりました。通って、形にしていてよかったと思いましたね。
そうなんですね。 ちなみに、テキスタイルのデザインはどういったことを意識して作るんですか?
テキスタイルは、やはりそのブランドのテイストにあうもの・売れる柄を意識しないといけなかったですね。でも、自分が描いたものが柄になって誰かに着てもらう、というのが嬉しかったです。
パターンということは、つなぎあわせられるような構成にしないといけないんですよね。
そうですね。描いたらPhotoshopを使ってつなぎあわせられるような柄にしていきます。テキスタイルのデザインもやり甲斐がありましたが、展示会のスタイル画を描いたりしている方が楽しかったですね。
仕事を辞めて26歳で飛び込んだベルリン
そうしてお仕事されていましたけど、26歳のときにベルリンへ行かれたんですよね。
そうですね。ベルリンには2週間ほど旅行に行って、すごく惹かれて住みたいなと思いました。それでワーホリを決めて貯金して、思い切って1年間いきました。
思い切りましたね…!
よくそう言われます(笑)
知り合いの人がベルリンにいたりしたので、タイミングもよかったですね。
なんでベルリンに惹かれたんですか?
最初繊維経済新聞を読んでた時に、ベルリンが今熱い!といって、ニューヨークやパリと一緒に紹介されていたんです。雑居ビルでファッションショーをしたりして、面白いなと思いました。オシャレなクリエイターが集まるミッテという地区があるんですけど、好きなミュージシャンがたまたま住んでいたりっして。ますますいきたくなりました。
実際行ってみていかがでしたか?
本当によかったです。
私からみると、ロンドンは東京みたいに発達していたし、パリは敷居が高かった。ベルリンはまだまだ発展途上で文化が混ざっている最中で、オープンな感じもあったんです。物価も当時は今より安かったな。
そうなんですね。ドイツにそんなにオープンな雰囲気があったとは。ベルリンにいる1年は何をされていたんですか?
アルバイトをしながら、制作したり、語学を学んだりしてました。それと、ホテルのデザイナーさんが私の絵をいいねっていってくれて、展示をしたりしました。
それまではお仕事とは別にアーティスト活動をされていたと思いますけど、ドイツから帰ってきて何か変わりましたか?
明確にドイツがターニングポイントとなりました。 それまでは「絵を描く」ことは服飾の仕事の一部だったんですけど、ドイツで解放されたんです。
アーティストとして自分のアートを届けたいって思われたんですね。
女性の「こうなりたい」を投影
このおしゃれでリラックスした感じの画風はもともとですか?
服飾の仕事の時はモードな絵を描いてたんですが描きたい画風ではありませんでした。今は日常的なリラックスしたシーンを描くことが好きですね。
画風自体はあんまり変わっていないけど、色使いは変わったかもしれません。日本とドイツでは色使いも違うし、住んでいるところの近くに美術館があったのでその影響も受けてるはずです。
柔らかくてアンニュイで、本当におしゃれですよね…。
ありがとうございます。
ドクターマーチンのインクを使っています。ホワイトのみ水彩の具です。下書きは鉛筆で描いて、ペンでも線を描きます。水彩がぼけた感じと、シャープなペンの線とバランスを取るのが好きですね。
この作品のインスピレーションはどこから得るんですか?
写真をモデルにすることが多いです。ファッション誌というよりは、ちょっとした日常を切り取った写真が特に好きです。甘いけど格好いい、みたいなのも好きです。柔らかい感じの人がタバコすってるみたいな。
確かに、アンニュイさもありながら乙女さもありますよね。この絵とか…「朝の食卓」っていうタイトルだから朝の光景なんでしょうけど、可愛いビスチェとおしゃれなピアスして。本当、こういう女の子になりたいって思います。
向こうの方は、朝からピアスされる方多いですね(笑) 力抜いてるけど、なんかそれがおしゃれなんですよね。
どれもこれも、日常のワンシーンを切り取ってますよね。
そうですね。日常に寄り添うアートを目指したいですし、気軽に飾って頂きたいです。似顔絵のオーダーもあったりします。
確かに「このおしゃれな雰囲気で自分が描かれたらどうなるんだろう?!」って気になるかも。
そうですよね(笑)
ちょっとその人らしさが入れば良いみたいです。プレゼントにも喜ばれますね。
自由に動いて、広がっていく
今は京都で活動されていますよね。素敵なアトリエも構えられていますが、生活はどのように変わりましたか?
今は販売の仕事をしながら、その傍らで作品を作っています。日本にいると「働かなきゃ」って思うけど、ドイツで生活してみたら、みんな自分で選択して自由に生活してるんです。APCで働きながら、写真家としてがっつり活動してたりとか。それをみてたら、自分ももっと自由に動きたいって。
今の日本にはあんまりない働き方ですよね。 周りから「何してるんだろ、あの人」って思われるかもしれない。けど、本人が目指すものがあってちゃんとやっていればいいですよね。
2012年秋に帰国してから、共通の友人に、以前パリのお花屋さんで働いていたフローリストの方を紹介してもらい、一緒にアトリエを構えています。
京都という土地はいかがですか?
人と人の縁が比較的近い印象があります。
作風で悩んだこともありました。京都は優しい雰囲気があるけど、私はちょっと尖っている感じや作品が好きだったから、あわないかなぁって…。もっと柔らかくした方がいいのかなと思う時もありました。
今はいかがですか?
イベント出店をするうちに京都にもお客さんが出来ました。それにわざわざ大阪の人が来てくださったりもします。
これからはどういったところを目指していきたいですか?
アートとして販売するのももちろんですが、自分が描いたイラストで「何ができるんだろう」って考えてます。今は化粧品のお仕事をしたり、「おかき」のパッケージを描いたりしてますけど、そうやって異業種とコラボするのは面白いですね。
「おかき」ですか?!
はい(笑)他の方がみると、自分の絵にいろんな可能性を発見してくれるんです。何に使われていくんだろうって思うとワクワクします。
例えば私はクラフトビールが好きなんですが、そこにおつまみとしてデザインした「おかき」が並んでいて、イベントをしてみるとか…いくらでも広がります。 京都にいると、商業的な仕事も多くて面白いですね。
これからも攻めの姿勢は続きそうですね。
はい。私のアートで何が出来るんだろう?っていうのがテーマです。
谷口さん、ありがとうございました!
そうなんです。今回のテーマは「nostalgia」ですね。ちょっとアンニュイなんだけど、格好いい女の子の日常を覗いてるようなアートを飾っています。
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