「ティツィアーノ展とヴェネツィア派展」@東京都美術館。柔らかな光の描写に恋をする

投稿日:(火)

アート

目次

2022.3.4.UPDATE

東京都美術館「ティツィアーノ展」

現在、東京都美術館で開催されている「ティツィアーノ展」にお邪魔してきました。


イタリアで画家の王者と呼ばれ、「褒めても褒めたりない画家」なんてベタ褒めされている「ティツィアーノ」。 そんな「ティツィアーノ」の絵画と、時を同じくして活動した「ヴェネツィア派」の絵画が贅沢に展示されています。


「ヴェネチィア派」の特徴である、豊かな光の表現がとても美しい作品ばかりを見ることができました。




実はじっくり見るのが初めてだった「ティツィアーノ」。
まず一部では、「ティツィアーノ」が所属していた「ヴェネツィア派」について解説されています。


どうやら、当時は有名な芸術家工房が画家たちの中心的な役割を果たすことで、ヴェネツィア派が発展していったようですね。かっちりした表現と、鮮やかな色彩が特徴的です。




当時は宗教組織が芸術家たちのパトロンでもあったようで、宗教関連の絵画が多いのも印象的でした。


いつも思うのですが、(そしてこういったら怒られそうですが)、宗教画で象徴的なシーンを繰り返し描いたり、そういった絵を発注することは、現代でいう同人誌を作る、的な側面もあったのではないでしょうか。


同じモチーフやシーンでも「う~ん私はあの画家のが描いたのがいいなあ、イエスが格好いいし」って、人々がこっそり言い合う、みたいな。そう考えると俗物的ではありますが、急に宗教画が身近に感じられる気がします。




余談ですが、美術館に行かれる際にはぜひ、音声ガイドを借りられることをお勧めします。歴史的背景をわかりやすく説明してくれていますし、BGMも入れてくれたりしてどっぷりとその世界に入り込むことが出来ますよ。


今回も別所哲也さんの音声ガイドが、優しく世界へ誘ってくれました。


とはいうものの、歴史的背景に囚われすぎる必要ももちろんありません。
美術は閲覧していると、ついつい「意味が分かる」「意味が分からない」で分類してしまいがちですが、目の前にある画家が描いたものそのものストレートの見て受け止めることも楽しみの1つです。


絵に潜む意外なモチーフの発見を楽しんだり、タイトルの意味を考えてみたりしながら進んでいきましょう。


さて、そうこうしているうちに第2部、いよいよティツィアーノの時代です。


肌の柔らかさが伝わる女性の描写

まず目に飛び込んでくるのは、今までないほど柔和そうな「ユディト」


シリアの将軍「ホロフェルネス」の首を自らとり、ユダヤの民を救ったとされる女傑「ユディト」は繰り返し描かれるシーンでもあるのですが…




正直言って左下に生首が描かれていなければ、近所にいそうな優しそうな少しふっくらとしたおばさんにしか見えません。以前同じく上野でみた、クラナッハが描いた妖しい微笑を浮かべたユディトとは大違いです。


続いてはティツィアーノ描いた、花の女神「フローラ」




 



文句無しに美しい女性でした。


ヴェネツィアでは、絵の具を塗り重ねた豊かな質感や、柔らかな色彩が、内から光輝くような造形が主流だったといいますが、まさに皮膚の下を巡る血管の音が聞こえそうです。


よく見ると薬指には指輪が光っているため「花嫁像」とも言われています。


そこからは肖像画が続いた先にあるのは、円熟期の作品「ダナエ」


これは、同じイタリアで活躍したフィレンツェの「ミケランジェロ」を意識したものだと言われています。




聞けば、ミケランジェロはこの絵をみて「素描の表現が惜しい」などとケチをつけたとか、つけてないとか。フィレンツェのミケランジェロと、ヴェネツィアのティツィアーノ。二人は同世代を生きたライバルだったようです。




そしていよいよ第3部です。


ここでは晩年のティツィアーノ作品とともに、ヴェネツィアで生まれた新たな絵画の担い手の作品が飾られています。


まず目に飛び込んでくる、油断のならない光が目に宿る老人の肖像画。




ティツィアーノが描いた、「教皇パウルス3世」です。


ティツィアーノはこのような肖像画の依頼を積極的に受けていたようです。権力者に愛されていたと同時に、かなりの野心家でもあったようですね。


そういえば現在はこのような宮廷画家のような職業って残っているのでしょうか。


そして、ちょっと面白いのがティツィアーノの流れを汲んだ「ヴェネツィア派」のティントレットの作品。




実は、描いてあるモチーフが狩りの女神ディアナなのか、女神ウェヌスなのか、と議論されている作品でもあります。そのどちらかによって、描かれている男性との関係性もまったく変わってくるからです。


画家本人がきっちりタイトルをつけていれば、このような論争も起こらなかったのでしょうが、モチーフや二人の表情からあれこれと議論することも楽しそうです。議論に決着はつかなさそうですが。


気軽にヴェネツィア派の時代へタイムスリップ

いかがでしたか? 作品点数こそ多くはありませんが、1つ1つの名画が際立つとても幻想な雰囲気の美術展でした。




館内の光は暗く、それがかえって鮮やかに絵を浮かび上がらせており、絵の色がライトで光って飛んでしまわないような配慮がされていたように思います。クラシックで上品な雰囲気の中で、ヴェネツィア派が追求した豊かな光の表現を楽しむことが出来ました。


今回は主催がNHKということもあり、後半にいくにつれて混み合いそうな気がします。 是非お早めに、静かな空間のなかで、まるでタイムスリップしたかのような感動を味わってください。




場所
東京都美術館「企画棟企画展示室」
アクセス
上野駅最寄り
会期
2017年4月2日(日)まで
休館日
毎月曜日、、3月21日(火)
開館時間
9:30~17:30(金曜日は9:30~20:00)
観覧料
一般1,600円、大学生・専門学校生1,300円、高校生800円、65歳以上1,000円(当日券の料金です)
詳しくはこちらから
http://www.tobikan.jp/exhibition/h28_titian.html

 


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