並々ならぬライブ感を感じるアートの数々。ルワンダで5年間を過ごした異色の人生とは? アーティスト掌(ツカサ)インタビュー

投稿日:(金)

掌_アーティスト

目次

2022.3.11.UPDATE


画家、デザイナー、パタンナー、ダンサー。
多数の肩書きを持ち、その全てを組み合わせて独特の世界を作り上げるアーティスト、掌(ツカサ)。
アフリカ・ルワンダでの活動経験がある若手アーティストは、日本で何をしようとしているのか?
アーティストの素顔、迫ります!




生と死の狭間をカラフルに描き出す


掌(ツカサ)さん、今日はよろしくお願いします!
今日は絵の撮影も兼ねているので作品をたくさん持ってきてもらっていますが…色のパワーがすごいですね。






ありがとうございます!




まず、掌さんの絵をみると、このカラフルさに圧倒されるんですよね。なかなか日本人がしない、できない色使いだと思うんですけれど、どうしてこういう風に描かれるんですか?





理由はたくさんあります!
イメージしているのは常に「走馬灯」です。生と死の狭間で映るような、この世にはない鮮やかな色…それを描きたいと思っています。




走馬灯ですか。自分自身はまだ経験したことがないですが、言われてみればしっくり来ます。何かきっかけとなる経験はあったんですか?





はい。僕はルワンダで5年間活動をしていたんですが、ある日地方の山に探検にいった時に、網を作って魚を捕まえにいってたんですよね。




すごいですね!!





そういうのが好きだったんです。でも、その川には寄生虫がいて、次の日から体は動かないわ。40度以上の熱が出るわ…視界がおかしくなりました。




その時の視界の裏の「ネオンのようなカラフルさ」とかを、何となく覚えていて、この不思議な感覚を絵に落とし込みたい、と思ったんです。




なるほど。
描かれるモチーフが「生きてるもの」しか描かれない、というのも意味があるんでしょうか?







ありますね。
色使いで「走馬灯」を表現するとしたら、やはり生物を描きたい。「瞳」のあるものを描きたいですね。




そうなんですね!
たしかに、どの絵も「瞳」がとても印象的でライブ感が伝わってきます。





動物の絵の依頼があったりもします。死んだ愛犬を描いてほしい、とか。
絵を描く時に魂を込めるから、限りなく生き物に近い絵になってきますね。 だから、不思議なことに「絵を見るたびに違う顔に見える」っていう感想もよくいただきます。




ご覧になっているその時の本人の感情も関係しているのかもしれませんね。




「誰も自分を知らない」土地を目指し、アフリカ・ルワンダへ



掌さんといえば、とても面白い経歴なのがアフリカのルワンダで5年間活動されていた、ということですよね。





はい、2011年3月11日の震災のあとから、2016年3月まで滞在しました。 






ルワンダには何故行かれたんですか?





そこまでは、服飾の専門学校の教員でした。その後、フリーランスで舞台衣装の制作や、似顔絵師等を請け負っていました。だけれど、あまりに自分の行動できるテリトリーが小さく感じて。これは新天地に行って何かをしないと、価値観が広がらない、と思いました。




「新天地」でルワンダを選択するのはなかなか凄いと思いますが…どこかでルワンダのことを見かけたのでしょうか。





青年海外協力隊で見かけました。たまたまルワンダで服飾教員を募集していたので、応募したんです。




迷いはなかったんですか?





全くなかったです。「アフリカ」「服飾」という2つの要素が見えたので、すぐに応募しました。まさしくアフリカでの生活なんて想像も付かない「新天地」だったので。




とても遠いですもんね。





誰も自分のことを知らない地域に行きたかったんです。




ルワンダは紛争地域だっただろうし、もちろん文化や国民性も日本とは異なると思います。ルワンダでは服飾の仕事をされていたと思うんですが、特に日本との違いを感じることはありますか?







はじめはルワンダの中でも田舎に行ったので、足し算・引き算・定規の使い方から教えなければいけませんでした。基本的なところをクリアして、商品の作り方を教えても、ルワンダのファッションマーケットが先進国からタダ同然で送られてくる古着たちに覆い尽くされているんです。 手をかけて1着を作り上げても、それを販路に乗せることはとても大変なことでした。




なるほど。根の深いシステムの問題ですね。





そうですね。やっぱり高級で海外志向のファッションブランドをルワンダで作らなくてはいけないと痛感しました。




長い目で取り組むことが必要ですね。ここまではボランティアで行かれていたんですよね?





そうですね。ボランティアが終わったタイミングで、たまたま日本のNPOに雇われて、今度はルワンダの首都へ行きました。外務省から資金をもらってプロフェッショナルの縫製技術を教えて、プロを育成するという仕事でした。






私、こういうワンピースすごく好きなんですけど、色が鮮やかで日本にはないセンスがありますよね?それはやはりアフリカ独特なのでしょうか。





たしかに、アフリカの人々は柄と柄で着こなしていましたね。ぼろぼろの古着だろうが、新品の白シャツだろうが、ごちゃまぜに着てましたけど、それがすごく似合っているんですよね。




日本だと「これにはこれをあわせなきゃ!」みたいなファッション学があったけど、いらないんだなと。そこで、色使いもルールを無視した感性が磨かれていきました。




では、ルワンダから帰ってきてからこういうカラフルなアートを始めたんですね。





いえ、行く前から始めていました! 行くって決めてから、黒人の文化に興味が湧いたので、感性がカラフルな黒人カルチャーに染まっていきましたね。




やはり黒人カルチャーはカラフルですか。







カラフルですね。アフリカだと、ナイジェリア人のフェラクティというアーティストがいるんですが、ライブパフォーマンスとか、ファッションセンスとかすごくカラフルですね。




そうして活動された5年間が、アートだけではなく、掌さんの佇まいとか、人間性にも現れている気がします。 そういえば、帰国を決めたのはどうしてなんですか?





5年間現地で活動して、現地を知った上で、日本から出来ることがあると思いました。地盤を日本において、アフリカへの支援活動をやるべきだと思ったんです。



「絵」は1つの手段に過ぎない



それで「Atomic Jungle」を立ち上げられたんですね。







アートブランドのようなものですよね。





そうですね。今は日本でアーティストとして、どんどん幅を広げて活動をしていきたいです。色々なことにチャレンジをする時期だと感じています。




この「バッファロー」の絵はブラックライトを当てると光るんですよね。他にも伝統と斬新さを掛け合わせた「ネオ美人画」だったり…作るアートも色々な表現を模索されているのかな、と感じます。







色々な素材に、色々なシチュエーションで描きたいですね。今度はボディペイントもやるんです。女性の体をキャンバスに、絵を描くイベントです。




え!!すごい!命あるものをキャンバスにするってすごいですね。





毎回初体験で挑戦です。




これらの挑戦は何を目指しているのでしょう?作品作りの枠を超えている気がします。





文化作りに興味があります。僕にとっては「絵」は一つの手段にすぎなくて、インスタレーションまで広げて表現をしたい。伝統を取り込みながら、新しい空間を作って、文化をリフレッシュしたいですね。




ユニット「東京獣舎」もその活動の一環でしょうか?





そうですね! 文化の匂いとハイテクのカオスさが東京だと思っているので、それを表現したいです。音楽とアートを五感で表現するために、着物を衣装にしたり、ブラックライトを使ってみたりしています。




Photo by 烏賀陽弘道




ちょうど、今度吉祥寺でイベントもされるんですよね。





はい、3/16~3/20まで吉祥寺のark factoryで行います。日替わりで様々なパフォーマンスをする予定です。




日本では「パフォーマンス」ってあんまりメジャーではないですよね?





そうですね、日本はパフォーマーに対して対価があまり支払われないと感じています。価値のあるものにしっかりお金を出す人に答えられるような、ハイクオリティーなパフォーマンスをつきつめていきたいですね。




絵はあくまで手段なんですね。これらのアーティスト活動を通じて得た資金はルワンダで活かされるということでしょうか?





そうですね。まず日本地盤を作ってからアフリカの事業に取り組みたいです。 今度アフリカにいくときはパフォーマンス広場みたいなのを作りたいですね。隠れた才能を発掘できるような。ルワンダではストリートパフォーマンスが禁止されているから、パフォーマンスする場所がないんです。 才能ある人がチャンスを狙いにいける場を作りたいですね。




まだまだ挑戦は続きますね。 掌さん、ありがとうございました!








 



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