「ミュシャ展」@国立新美術館。チェコ国外での全編展示は史上初!!制作年数20年余り《スラヴ叙事詩》の迫力

投稿日:(金)

アート

目次

2022.3.11.UPDATE

「ミュシャ展」@国立新美術館

2017年の大本命、「ミュシャ」の展覧会@国立新美術館に行ってまいりました。


ミュシャといえば、華麗な曲線を多用したイラストレーションやポスターが有名な、チェコ出身のグラフィック・デザイナー。


美しく繊細なデザインは女性を中心にとても人気がありますが、ご本人は案外渋いイケメンです。




さて、そんな大人気のミュシャが手がけた絵画《スラヴ叙事詩》が展示されているということで、国立新美術館へ行ってまいりました。




(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


《スラヴ叙事詩》 とは、人気ポスター作家という地位を捨て、フランスから祖国チェコに戻ったミュシャが、まさに人生をかけて制作した全20点からなる連作です。


制作年数は20年近くに渡り、祖国愛が強かったミュシャが故郷チェコのために描いたもので、古代から近代に至るスラヴ民族の苦難と栄光の歴史がモチーフとなっています。


制作期間中には第一次世界大戦が勃発し、チェコスロバキア共和国として独立。この《スラヴ叙事詩》をきっかけとして、民族意識の回復を望んでいたというミュシャですが、取り巻く急激な社会情勢の変化がその想いを押し込んで行きます。



《スラヴ叙事詩「原故郷のスラヴ民族」》 1912年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery


そんな20年にもわたるストーリーが染み込んだ《スラヴ叙事詩》には、驚くべき点がいくつもあります。


まずはそのサイズ。



《スラヴ叙事詩「原故郷のスラヴ民族」》 1912年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery


小さいものでも、4m×5m、最大のものではなんと6m×8mもあります。まるでミュシャの絵に包まれているかのような感覚に陥ります。


そして、ただ大きいだけの絵ではないところが、《スラヴ叙事詩》 のスゴイところ。 例えば、上の 《スラヴ叙事詩「原故郷のスラヴ民族」》 に関しては、登場人物の衣装や装身具、羊の群れ、星空に輝く星の一つ一つまでが丁寧に描かれています。


巨大な画面の隅から隅まで、実に丁寧に描きこまれているのです。



《スラヴ叙事詩「ロシアの農奴制の廃止」》(部分) 1912年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery


それが2つ目の驚きポイントです。


でも、最大の驚きはこの展覧会そのものなのです。


史上初!チェコ国外での全20点一斉展示

今回の展覧会の最大の驚きは何と言っても、《スラヴ叙事詩》全20点が一挙に展示されているということ。


全20作品の展示は、チェコ国外においては初めてのこととなります。すごいです、日本。


ちなみに、ミュシャが存命中に全20作品が展示されたのは、1928年にチェコの宮殿で展示されたとき、ただの1度きり。


ミュシャはこの大作を描き終えた後、展示スペースの確保を条件にプラハ市に20作品全てを寄贈したのですが、その約束は守られませんでした。


第二次世界大戦が勃発し、さらに激しく揺れ動く欧州の中で、この作品はひっそりと秘蔵されていたようです。 そういうことを考えると、20作品全てが揃うこの空間は奇跡のように感じられます。




あまりにも素晴らしくて、いつまでも浸っていたくて、何度も会場内を行ったり来たりしてしまいました。


国際問題になるのは重々承知ですが、チェコに返さないで、このまま日本にこの空間を残しておきたいくらいです (笑)


もちろん残しておくのは絶対に無理なので、なんとか脳裏に焼き付ける努力をしました。


全20点の中で特に脳裏に焼き付いているのが、《スラヴ叙事詩「東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン」》 です。



《スラヴ叙事詩「東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン」》 1923年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery


《スラヴ叙事詩》 に描かれている人物は、鑑賞者をじっと見据えている構図が多いのですが、とりわけこの1枚は視線が突き刺さるような迫力。


思わず後ずさってしまうほどの気迫がありました。


さて、ミュシャといえば、のポスター。今回の展覧会でも、ミュシャのポスター作品は展示されていましたが。



《四つの花「ユリ」》 1897年 堺市


《スラヴ叙事詩》 のあとに登場するので・・・




正直なところ、蛇足に感じてしまいました(笑)


これまで何度かミュシャの展覧会を鑑賞していますが、まさかミュシャ展で、ミュシャのポスターに心が動かないことがあろうとは、初体験です。 どうやら今回の展覧会を通じて、ミュシャ=ポスター作家というイメージは吹き飛んでしまったようです。


さて、イメージの変化、といえば、今回のミュシャ展のキャプションでは、作家名のところに『ミュシャ』とは書かれていませんでした。




ミュシャのチェコ語読みの『ムハ』が採用されていました。(『ミュシャ』 はフランス語読みです)


もしかしたら、展覧会が終わる頃には、『ミュシャ』 ではなく、『ムハ』 の名前のほうが浸透しているかもしれません。


祖国チェコを愛したミュシャ、いや『ムハ』の気迫が会場全体から伝わるような、そんな唯一無二の展示会でした。




場所
国立新美術館
アクセス
乃木坂駅最寄
会期
2017年6月5日(月)まで
休館日
毎火曜日
開館時間
10:00~18:00(金曜日は10:00~20:00)
観覧料
一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円 (当日券の料金です)
詳しくはこちらから
http://www.mucha2017.jp/

 

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