メセナとは? まちなかにたたずむ「コミッションワーク」【メセナを学ぶVol.1】

投稿日:(金)

オブジェ_アート

目次

2022.3.4.UPDATE

みなさんこんにちは。ライターの高橋です。武蔵野美術大学在学中からギャラリーでのアルバイトやアート系NPOのインターン等を経て、現在は東京近郊の美術施設で働いています。


今回は話題の「メセナ」について、以下の4つのシリーズに分けてお届けしていきます。

【メセナを学ぶシリーズ】

 

Vol.1 メセナとは?まちなかにたたずむ「コミッションワーク」

Vol.2 アートの民間支援のルーツをたどる

Vol.3 どうして企業は芸術文化に投資するのか?現代のメセナのあり方とは

Vol.4 メセナを「体感」する!おすすめアートスペース5+1選


メセナとは、企業がアートをはじめとしたさまざまな芸術文化の活動を支援する方法です。


日々の暮らしや社会と離れたところにあると思われがちなアート。しかし、実は意外なところでつながっていたり、身近な存在だったりするんです。


その接点のひとつとして、国内外の企業が果たしている役割は小さくありません。「メセナ」を紹介するこのシリーズを通じて、みなさんとアートとの距離が、少しずつ縮められれば幸いです。


また、シリーズの最後にご紹介するアートスペースは、みなさんも必ず知っている企業とつながりのある場所ですので、気になった方はぜひ、足を運んでみてくださいね。



メセナとは?まちなかにたたずむ「コミッションワーク」

さて、冒頭でもざっくりとお伝えしましたが、メセナとは企業がひろく芸術や文化に関する活動を支援することを指します。フランス語で「文化の擁護」という意味があり、欧米では1950年代ごろから、日本では1960~70年代にかけてさかんに行われるようになりました。


現代においても、日本ではさまざまなメセナが行われています。例えば、みなさんは森ビル株式会社をご存知でしょうか? 通称「森ビル」は、六本木ヒルズやラフォーレ原宿を運営する都市デベロッパー/不動産会社です。



六本木ヒルズ



ラフォーレ原宿


六本木ヒルズ内には、観光やデートスポットとしても知られる森美術館がありますが、森ビルの初代社長の森稔氏は、森美術館の創立者でもありました。そんな彼の願いは、森美術館が日本だけではなく世界の文化拠点になることだったそうです。


そんな森ビルのメセナには、美術館の創設だけでなく、国内外のアーティストによるアート作品を六本木ヒルズ周辺に設置する活動も含まれています。例えば、六本木ヒルズ内のメインエントランスである66プラザには、このような作品が設置されています。



ルイーズ・ブルジョワ《ママン》(2002年)


この巨大な蜘蛛の彫刻作品は、フランス出身のルイーズ・ブルジョワというアーティストが制作したものです。大きな卵を抱えたこのメスの蜘蛛からは、たくましさやしたたかさが感じられます。ブルジョワはこの作品に、粗暴な夫(ルイーズにとっての父)のいる逆境にめげず、家業のタペストリー工場を成功させた母親に対する憧れや尊敬の念を込めているそう。


そんな《ママン》は2002年に六本木ヒルズがオープンする際、森美術館の初代館長であるデヴィッド・エリオット氏がプロデュース(委託制作・監修)した作品のひとつで、人が人と、あるいはアートと出会うことで、六本木ヒルズが蜘蛛の巣のように新たなネットワークの広がる場になってほしいというコンセプトのもと設置されました。


《ママン》が設置されてからもうすぐ20年。そこにはアーティストの思いだけでなく、エリオット氏、森氏、そして鑑賞者の思いと、時とともに多くの人びとの思いが込められ続け、よりいっそう魅力的な作品となっています。



このように、企業や自治体などがアーティストに依頼して制作、または設置される作品を「コミッション・ワーク」と呼びます。特に屋外に設置されたものは、「パブリック・アート(公共の場にあるアート)」とも呼ばれ、誰でも見ることのできる作品として、また、まちの一部として、私たちのすぐそばに存在しているのです。



パブリック・アートの例


場所:新宿アイランド/ロバート・インディアナ《LOVE》(1993年)

場所:新宿駅西口地下広場/宮下芳子《新宿の目》(1969年)



まとめ

「メセナ」とは、企業がひろく芸術や文化に関する活動を支援すること。


今回は森ビル株式会社にゆかりのある森美術館を例に挙げましたが、そのような例のみならず、メセナはアーティストの制作活動への出資や作品購入、アートスペースやアートイベントの運営なども含まれます。


アーティストが作品を作るだけではなく、それを発表する場を支える人が加わることで、私たちがより様々な機会や場所でアートに出会うことができる。企業メセナは、アートと鑑賞者のメディエーターとしての役割を果たしていると言えますね。


次回はもう少し視野を広げて、日本で行われてきた広い意味でのメセナ=アートの支援の歴史についてお届けします。


どうぞお楽しみに!



(参考)

・『進化するアートマネジメント』林容子著、レイライン、2004年

・『美術、市場、地域通貨をめぐって』白川昌生著、水声社、2001年

・公益社団法人 企業メセナ協議会

https://www.mecenat.or.jp/ja/

・2019年度メセナ活動実態調査[報告書]

https://www.mecenat.or.jp/ja/wp-content/uploads/MecenatReport2019.pdf







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