子供こそ連れて行きたい!お笑い江戸名所”歌川広景の全貌”
投稿日:(火)
目次
子供を連れて行きたい展覧会
「展覧会」というと、どうしても大人のためのものというイメージですよね。 数々の著名なアートも、子供の前では形無し。
すぐに飽きちゃうし、騒いじゃうし、ゆっくり見られないから、子供連れでは行かない展覧会。
でも、今回ご紹介するのは「子供を是非連れて行きたい」・・・いや、「子供にこそバカ受けする?!」展覧会です。できれば小学校低学年の男子なんか、最適かもしれません。
展示されているのは「浮世絵」。
え、浮世絵なんて難しいのでは?・・・と思ったあなた、今回ご紹介する歌川広景の浮世絵は、現代の我々からしてもとっても楽しくて笑える浮世絵なのです。 会期が1月末までなのですが、親子で行ってゲラゲラ笑って江戸の人々を身近に感じて頂きたい、そんな展覧会です。
それでは、詳しく解説していきます。
謎の浮世絵絵師「歌川広景(ひろかげ)」
歌川広景(ひろかげ)をご存知でしょうか?
活動期間はわずか2年半、歌川広重の弟子であったということ以外何一つわかっていない謎の浮世絵絵師。彼にスポットを当てた展覧会が、太田記念美術館で開催中です。
その名も、“お笑い江戸名所 歌川広景の全貌” 。
名前もなかなかユニークな展覧会ですが、さてどこにお笑い要素がちりばめられているのでしょう。
展覧会のメインとなるのは、歌川広景唯一の代表作 《江戸名所道戯尽》 シリーズ。今回の展覧会では、シリーズ全50点が一挙に公開されています。
描かれているのは、江戸の名所。そしてそこに描かれている人々は、何かしらのドタバタコメディを繰り広げています。言うなれば、広重の 《名所江戸百景》 のパロディ版です。
さて、「浮世絵と笑い」と聞くと、歌川国芳のようなウィットに富んだセンスあふれるユーモアが自然と思い出されます。かなり上品で、ちょっとシュールなユーモアですね。
ところが、広景の笑いは、そういう笑いではありません。ウィットのウの字もなく、笑いの質は低め。 しかし、小学生男子ウケは確実。
『コロコロコミック』、もしくは 『浦安鉄筋家族』 の笑いに近い気がします。 少しだけ、その笑える浮世絵をご紹介していきます。
抜かりなく 低レベル!何やってんだ江戸の人々
例えば、《江戸名所道戯尽 十五 霞が関の眺望》。
うーん?なんだか臭そうですね。
基本的には、「臭い」 か 「ズッコける」 か、そのどちらかに頼る。 それが、《江戸名所道戯尽》 クオリティです。
馬がいきなり暴れたのでしょうか。 背中の荷がぶちまけられてしまっています。荷の中身はなんでしょう。 とりあえず、周りの人のリアクションから、臭いものであることは確かです。 そして手綱を引いていたであろう男性は、ドリフばりにズッコけています。
ちなみに、こちらの作品の元ネタとなっているのは、 師匠である広重の 《名所江戸百景 霞かせき》 です。こちらの作品ですね。
このように、会場では広景作品の元ネタ作品も数点ほど合わせて展示されています。純粋に美しい浮世絵を見たい方、ご安心ください。(?)
見比べると非常に面白いですよ。
また、例えば、《江戸名所道外尽 廿八 妻恋こみ坂の景》。
パッとみると、ただ色合いの美しい浮世絵ですが、よく見ると沈痛な顔をして座り込んでいる人々が描かれています。そして、さらに便所の奥でやたらといい笑顔を見せているお侍さんの姿も。
そんな臭そうな浮世絵を、更によーく見てみると、公衆便所の中を落書きを発見!
江戸時代から、トイレに落書きは付き物だったのですね。 しかも、人の顔に相合傘におちん●んに・・・。 落書きの内容も現代と変わりなく、抜かりなく低レベルです。
要は、公衆便所で用を足すお侍さんの臭いがあまりに強烈で、道行く人々が思わず鼻を押さえているシーンが描かれているのです。ただそれだけなのです。
現代も「あるある」の光景
さて、ここからは特に紹介したい作品を。 まずは、《江戸名所道戯尽 四十五 赤坂の景》 から。
舞台は、床屋。気がついたら変な髪形にされてしまっていた、という床屋あるあるが描かれています。周囲の客も遠慮なく爆笑中のようです。 江戸時代から、床屋の罠は存在していたのですね。
ほかにも、《江戸名所道戯尽 三十八 小石川にしとみ坂の図》 にも、現代ではおなじみの情景が描かれています。 時代が変わっても、考えることは同じだったようです。
坂の上からオレンジが転がってくるシーンです。
少女漫画かオシャレなフランス映画でなら、拾ってくれた男性とのロマンスでも始まりそうなものですが、《江戸名所道戯尽》では、拾ってくれずに食べてしまっています。ロマンスは残念ながら始まりそうにありません。
続いては、《江戸名所道戯尽 二十九 筋違御門うち》 。
手鏡のせいで女性の顔の一部が大きくなってしまった、という光景が描かれています。なんともシュールな光景です。 元祖ケント・デリカット。
また、本筋の笑いとはズレてしまいますが、《江戸名所道戯尽 二十一 上野中堂二ツ堂の花見》 も気になって仕方が無かった作品です。
画面右の女性の走り方がものすごく変。
首どうなっているんでしょうか?目の前からこんな女性が走ってきたら、恐怖のあまりに一目散に逃げてしまいそうです。実は、この絵以外にも、「ん?」 と気になってしまう作品が多々ありました。
広景の浮世絵人生が短命だったのは、「異人に城の絵を内密に送った」というスパイ嫌疑をかけれたから、という説もささやかれていますが、それだけではないような。
絵心にやや難ありの広景。そのあたりにも浮世絵人生が短命だった理由のヒントがありそうです。
最後に、《江戸名所道戯尽 二十二 御蔵前の雪》 をご紹介いたしましょう。
すっとぼけた顔をした、雪で作っただるま。これが本当の雪だるま。
だるまにも見えますが、たけしくん (@平成教育委員会) にも見えます。 なんと、この絵画はwikipediaの「雪だるま」頁にも登場するのですから、大したものです。
子供も大人も楽しんで見られる(むしろ子供こそ楽しめる)、浮世絵の世界。是非、1月中に足を運んでみてください。
- 場所
- 太田記念美術館
- アクセス
- 原宿駅、明治神宮前駅最寄り
- 会期
- 2017年1月29日(日)まで
- 休館日
- 10日,16日,23日
- 開館時間
- 10:30~17:30
- 観覧料
- 一般700円、高校生・大学生500円、中学生以下無料
- 詳しくはこちらから
- http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/hirokage-edomeisho