2019.01.24

    アート探訪

    【鈴木芳雄×大竹寛子】アートの意味が示すビジネスの未来とは? (前編)

    WASABIライター 中島なつみ

    ペン

    WASABIライター 中島なつみ

    気になっていた、アートとビジネスの関係性

     

    最近じわじわと世間を賑わせている、アート×ビジネスの話。

    今年の夏にはアートスタートアップのStartbahnが1億円もの出資を受けたり、雑誌の美術手帖の表紙を「アート×ブロックチェーン」という言葉が飾っていたのが印象的。
     

    また、soup stock tokyoなどを手がけた株式会社スマイルズの遠山正道氏や、株式会社ZOZOの前澤友作氏などが挙げられるように、アートの思想をビジネスの思考に生かし、オフィス空間にもアートを取り入れる経営者たちにも注目が集まっています。日常から遠い存在だったアートは、いつのまに私たちの生活を変革しうるものになっていたのです。
     

    これは気になるぞ!ということで、11月11日に行われた、株式会社tremolo主催”アート×ビジネス”をテーマに開催されたパーティ、「ARTMAN」にお邪魔しました。

    WASABI編集部が特に注目したのは、パーティの目玉とも言えるトークショー。有識者が語るアートについて、前後編に分けてお伝えしていきます!!

     

    イベントを主催した『tremolo』とは?

    広告、飲食、建築。

    面白いことに株式会社tremoloの設立者3人は、身を置いていたビジネスの畑が全く違う。出自もバラバラで偶然出会った彼らですが、それぞれ自身のクリエイティビティを生かして仕事をしてきたもの同士、一番共通するビジョンを感じたものが「アート」でした。

     

    単純に鑑賞することや、何かを描く作業ではなく、その本質にある日常から「問い」を見つけ出す、その問いを表現し伝える、そして不可能を可能に近づける、、アートの持つそんな側面への共感がきっかけだったそう。

     

    そんなアートの力をtremoloは『イタズラ』と呼び、「アートにイタズラを、アートでイタズラを」というビジョンを掲げ設立されました。契約アーティストのプロデュース、アーティストを世界と繋げるデータベースの提供、他業界の企業との共同プロジェクト開発など、アート業界の刷新とアートによる他業界の刷新を進めています。そんなtremoloが主催するトークショー、一体どうなるんでしょうか。

     

    トークショー登壇メンバー

     

    本人イメージ

    ファシリテーター:田中滉大

    株式会社tremoloの取締役。元広告マン。アートのもつ「イタズラ」の力を社会に還元したいと思い、起業に至る。tremoloでは、事業開発の責任者として、様々なプロジェクトプロデュースを外部企業と連携して行なっている。


    本人イメージ

    ゲストアーティスト:大竹寛子

    日本画伝統の素材を用いて現代美術としての表現に挑み、深い精神性と流麗な作風がニューヨークでも新しいスタイルとして認められ、数多くの成果を残す。ライブパフォーマンス、ブランドとのコラボレーションなど新しいことに挑戦し、日本画の可能性を追求し続けるアーティスト。


    本人イメージ

    ゲストスピーカー:鈴木芳雄

    雑誌ブルータス副編集長を経て、現在は美術ジャーナリスト。ビジネスとアートを「対比」「類似」「互いに応用」の関係で語る。ビジネスマンを対象に「どんなに仕事ができても自分の国の芸術をきちんと語れなければビジネスマンとしては二流です」などの講演もしている。最近ではアーティストでは杉本博司氏、会田誠氏、ビジネスマンでは前澤友作氏、石川康晴氏らにインタビューあり。「ぴあ」で遠山正道氏と月二回、対談連載をしている。

     

    アートってそもそも何?
    Twitter,Airbnb...話題の経営者たちの持つアート思考

     

    今日はよろしくお願いします。ファシリテーターのtremoloの田中です。ビジネスをやられている方は特に感じていることだとは思うんですけど、今の世の中は変化が激しく予測困難です。そんな中で闇雲にアイデアを出すのではなくて、本質を見直すことで新しい価値を生み出す動きが重要になっていると考えます。その発想を深めるべく、アートとビジネスをキーワードにトークセッションを進めていきたいと思います。

     


     よろしくお願いします!

     


    まずお話したいのは「アートってそもそも何?」ということ。美術は歴史が絡んでいたり、手の届かない値段であったり、なんとなく敷居が高いと感じる人も多いと思います。その一方で、本質的に思想として取り入れる方もいる。

    「アートは美術館にしかない」と思ってる方も結構いると思うのですが、日常の中で一般の方でも美術と出会える場所って他にあると思いますか?

     


     まさに今いるこのギャラリースペースはそうですよね。アート関係じゃない友人の中には、ギャラリーに入ったことがない人もいます。興味やきっかけが無いと入り辛い印象もあるかもしれません。

     
    juliet

     

    確かに。僕はロンドンで買った絵を持っているんですけど、アートを購入して自宅に取り入れる方は増えている印象があります。有名な方だとZOZOの前澤さんとかが、そういうムーブメントを牽引してるような

     


    最近僕も、コレクター(アートの収集家)の取材していたら、ビジネスマンが多かったんです。日本のゼロ年代の作品に多大な貢献をして、今も活躍を続けているコレクターでは高橋龍太郎先生がいますね。彼は知的富裕層で余裕がある、古来からのコレクター。そういう意味では前澤さんとか遠山正道さんとか新進気鋭の起業家達は、高橋さんとは違う新しいタイプのコレクターかなって思います。

     


    それは面白いですね。海外のCEOもアートへの造詣が深い人が多い。例えばTwitterの創業者のジャック・ドーシー。彼は、多くのメディアでビジエスのヒントはアートから学んだと公言していますし、Airbnb創業者のブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアはアート・デザイン教育で名高いロードアイランドスクールオブデザインに通っていました。

    これらのことから考えると、今の世の中を変えていっているようなビジネスが、アート発想から生まれているところもあると思います。

     



    アートが持つ「高級品」以外の価値。人に多様性や思考を与える。

     

    単純に展示として飾られているアートは往々にして高級なものですが、「高級品」とは違ったアートの価値について、大竹さんはどうお考えですか?

     


     私はアーティストとしてインタビューで「アートとは何ですか?」と質問されることがよくあります。その時に答えるのは、私にとってはアートは生まれた時から身近にあるモノということです。常にどういう風に生きていくかを気づかせてくれるもの。哲学そのもので、根源となるものだと思います。



                          juliet
     

    キーワードとして哲学が出てきました。哲学や思想としてのアートからインスピレーションを受けることは、どんな人にも共通してあることだと感じました。大竹さんは哲学としてのアートについてどう思われますか?

     


     アートは人に多様性を持たせるものの一つです。既存のものを疑い、革新の可能性を探りながら、自分ができることをやっていく、やれるべきことを議論していく。そうやって可能性に気がつかせてくれるものだと思います。

     

    アートはグローバルな共通言語。
    炎上するTwitter、炎上しにくいInstagram

     

    鈴木さんは世界中で取材をされてきたと思うんですが、アートがどのように人々に捉えられていると感じましたか?

     


    例えば、ビジネスでもプライベートでも海外で出会った人とどんな話をしようかってなった時に「アメリカの中間選挙は...」「お国はイスラム教で...」なんて言わないでしょう?政治・宗教の話はセンシティブですから。でも、アートの話はウェルカム。コミュニケーションツールになり、それが好きでも嫌いでも、批判しても賞賛しても、喧嘩にはならない話題なんですよね。



    juliet

     

    説明や言葉がいらないからこそ、グローバルな共通言語ですよね。

     


     私はNYにいた頃、英語はそこまで流暢じゃありませんでした。個展を開いた時に説明をしなくちゃいけないんですけど、目の前に作品があることで拙い英語でも伝わるんです。逆に日本で個展を開くときのほうが「日本画」という言葉が邪魔してしまってフラットに見づらくなることもある。言葉は必要だけど、それを超えた何かがアートにはあるのかなって。

     


    直感的だから、誤解が生まれづらいんだよね。Twitterは炎上するけど、Instagramはほとんど炎上しないのはそういうこと。見たものはみんな素直に受け取れるところがあって、読むものはタイムラグや個人差、読解力とかで変わってきてしまう。

     


    それはビジネスの領域でも言えることですね。パワーポイントで資料を作ると思うんですが、言葉よりもビジュアルやインフォグラフで伝えた方が早い。言葉だとどうしてもその表現や込められている個人の思想が滲みやすいですし、 個人の持つ文化背景の共有が出来なかったりする。コミュニケーションや情報伝達を客観的に捉えると、ビジュアルを用いることがビジネスの基本としてあると思われます。

     

    「今」を否定し、「未来」を目指すアートの思考

     

     ビジュアルに走り過ぎてコンセプトがない作品になってしまったり、逆にコンセプトに走り過ぎてある種の無のような作品が溢れたり。アートの世界では、そういうことを繰り返します。

     


    以前からあるものを良い意味で疑い、自分の「良いと思う」発想によって差異を生み出していく。この思考は、年々重要性を増してきていますよね。何かを作っている時に、「本当にこれ作りたかったんだっけ」「これって本当に大切なんだっけ?」と何度もなんども立ち返ることがビジネスでも大切ですね。

     
    クリエイティブ思考を身につける起業家たち、コミュニケーションとしてのアート、否定することで新しいものを探す視点。

     

    いかがだったでしょうか?

    アートがビジネスのヒントを握っていることが徐々に分かってきました。

    後編では、アートとデザインの違いや、現代美術の思想にも触れながら、ビジネスの未来について話が展開していきます。お楽しみに!


    Back number

    FEATURE 特集

    STORY コラム



    Follow US

    >