2016.9.2

インテリア

プロが教える絵の飾り方の完全マニュアル。どんな空間でもおしゃれに絵を飾ろう!

インテリア三宅

ペン

インテリアコーディネーター 三宅 利佳

名前をなくした男は、ついには白い壁になった?


阿部公房の「壁」という小説には、名前に逃げられた男が登場します。 いつもと変わりない朝を迎え、出勤前にいつものカフェに立ち寄り朝ごはんを済ませ、さていつものように会計を済ませようとサインを書こうとしたときに気が付くのです、おや!名前をなくしてしまったぞ!と。


男はそこから奇妙な世界に引きずり込まれていきます。違和感を覚えながらもとりあえず会社にたどり着くと自分の席には自分の名刺が座っていて、何事もないような顔をして仕事をしています。いったいどうなっているのだと名前喪失の原因探しに奔走しはじめた男は、へんてこりんな登場人物にたくさん出会います。


そんな中で、ふと手にして眺めた雑誌。中の景色に心を奪われていたら景色が消えてページが白紙になりました。男は「景色を盗んだ罪」で裁判にかけられてしまいます。
名前をなくした男は現実の世界での存在権を失い、世界の果てに逃亡しついに「白い壁」になってしまった、というなんとも奇妙で面白い小説です。




名前をなくしてなんかいない私たちのまわりにも白い壁がたくさんあります。まわりにあるほとんどの壁は白い、と言い換えてもいいかもしれません。


白い空間はすっきりとしてかっこ良いですしなにより普遍的で飽きがきません。ですが、名前をなくした男が白い壁になったように、それは言い換えれば、白い壁はのっぺらぼうで存在感がないという暗喩のようにも思えます。


白い壁は大いに自分色に染めよう

さて、インテリアの話をしましょう。

そこに壁があるならば、絵やパネルを飾りたくなるのはもしかしたら人間の本能なのかもしれません。私が住む部屋は「私らしく」、あなたが住む部屋は「あなたらしく」ありたいのです。


世の中にはこんなにも白い壁が存在しているのですから、大いに自分色に染めていきたいじゃありませんか。自分らしさを取り戻し、アイデンティティを表現するためにも。




ところで、壁に絵やパネルを飾る時にはちょっとしたコツがあります。 ただやみくもに飾るのではなく、美しく見える法則があるのです。


その数mmで印象が変わる。
絵を買ったなら、飾り方までこだわれ!


その1:高さ


絵やパネルを飾る高さは「目線に合わせる」というのが正解です。 美術館などでは、絵の中心部が床から140〜150センチの位置になるように展示されます。 これは鑑賞するお客さんの平均的な目線の高さから割り出されています。




作品の前にたくさんの人が重なるだろうなと混雑が予想される企画展の場合には、通常よりも少し高めにして遠くから見やすいように調整するのだそうです。


自宅のインテリアとして絵やパネルを飾る時も考え方は同じです。絵の中心が床から140〜150センチを基準にすると良いでしょう。
一般的にこれより高めの位置に飾っている方が多いようですので、ほんの少し低めにと意識して140〜150センチのところにぜひ飾ってみてください。バランスが変わるだけでギャラリーのような雰囲気になります。



その2:ボリュームと形



飾りたいその壁をよく見てみましょう。
横長の空間ですか、それとも縦長の空間でしょうか。
横長なら、飾る絵やパネルも横長のデザインにしましょう。
縦長なら、飾る絵やパネルも縦長にするのが良いと思います。
空間の形に合わせるとおさまりが良くなります。


壁面に対して50%を占めるぐらいの大きなボリュームで飾れば、大胆で華やか、モダンな空間になります。20〜30%程度で小さく飾ればシンプルでカジュアル、静かな印象の空間になります。



その3:場所


飾る場所はどこが良いでしょう。
狭いから飾るところがない、なんて思い込んでいませんか。どこかに必ずあるはずです。 フォーカルポイント(インテリアの見せ場とする部分)を意識しましょう。




リビングのソファのところ。腰窓の横の壁。
ベッドの頭のところ。
コンソールテーブルやチェストなど家具を置いているところ。
玄関の正面の壁。
トイレの壁面。
廊下と階段にはギャラリーのように。
洗面室。



さあ、あなたはどこに飾りたくなりましたか?



その4:配置


1つを飾る場合と、複数を並べる場合とあります。 複数を並べる場合にはいくつものバリエーションが考えられます。




  1. 1.中心部を揃えて一列に横に並べる「みたらし団子型」
  2. 2.上部(または下部)を揃えて1列に横に並べる「行列型」
  3. 3.中心部を揃えて一列に縦に並べる「串の字型」
  4. 4.縦横ルービックキューブのように整然と並べる「田の字型」
  5. 5.高さをずらして並べる「表彰台型」
  6. 6.段々に並べる「階段型」
  7. 7.集合体として四角に並べる「住宅街型」
  8. 8.集合体として三角に並べる「ヒエラルキー型」
  9. 9.ハートなどの形に並べる「アート型」
  10. 10.そんなの関係ない「ランダム型」

これらを組み合わせたりアレンジさせることで、さまざまなバリエーションの飾り方が生まれます。そして飾る時には決して「紐」は見せないことです。


あなたが選んだ「アート」が活きる空間に。




さて、絵やパネルを飾るからには、それをより効果的にかっこよく見せたいものです。お部屋をぐるっと見渡してみてください。壁にいろんなものがぶら下がっていませんか。せっかく飾った絵やパネルも、雑然とした空間の中では視線も迷いますし素敵具合が半減してしまいます。


ダサいカレンダー、ごみ収集日をお知らせするプリント、厄除けのお札(おふだ)や破魔矢、枯れまくって埃をかぶったドライフラワー、干しっぱなしの洗濯物、もしも心当たりがあるようでしたら、それらをはがす、どこか別の場所に移動させるなどをして今すぐ片付けてください。絵やパネルがかっこよく見えるようにぜひともお部屋は整えておくべきです。


ちなみに、絵を飾る時に壁が傷つくのでは…と懸念される方もいらっしゃると思いますが、いまはかなりいろいろなアイテムがでており、傷つけずに絵を飾ることが可能です。参考にしてみてくださいね。




さぁ、自分らしく暮らすために、まずは1枚、絵を選んでみましょう。
どこで買えばいいのだろう、どこで出会えるのだろう。 絵を買うのは難しくて特別なことだと思うかもしれません。

1枚の絵、1枚のアートは、きっとインテリアに華を添えてくれます。 アートはあなたの暮らしを間違いなく豊かにしてくれます。

 

Back number

SPECIAL ISSUE

    STORY コラム

      Follow US