2017.3.27

インテリア

例えば、ワンルームに絵を飾ったら。
どこかで今日も起きてるかもしれない、そんなストーリー

インテリア三宅

ペン

インテリアコーディネーター 三宅 利佳

例えばこんな、一人暮らしのストーリー

今日は少し飲みすぎたなぁ、なんていう日もありますよね。


フラフラと風にあたりながら夜の街を千鳥足でさまよっていると、道端でギターを演奏している路上パフォーマーに出くわすことがあります。終電も逃した深夜。


ふと気持ちが誘われ近づいていきますと先客でいた数人の見物人がその役割からようやく解放されるとばかりにすーっと立ち去り消えていきます。残されたのは1人のミュージシャンと1人の観客。別の言い方をしよう、ギターを持った夢追い人が1人と、家に帰り損ねた酔っぱらいのOLが1人、だ。


ギター

夢追い人はたった一人の観客の前でギターを奏で、振り絞るような叫び声の歌が夜の闇に吸い込まれていきます。


「すごい感動しました!素晴らしい音楽でした!絶対に売れますよ!頑張ってください!絶対に応援します!絶対にCD買います!本当にすごいです!」


酔っぱらいはフタの開いたギターケースの中に3000円ほどを置いて、夢追い人と握手を交わしたのでした。


さて、翌朝目覚めると地球がグワグワンと回っています。完全完璧な二日酔い。今日は会社が休みでよかった。お財布にお金が入ってないことに気が付き何があったっけと記憶を引っ張り出し、路上ミュージシャンに、そうだ、渡しちゃったんだということを思い出します。


ワンルームで一人暮らし。生活のすべてが「わくわく」のカタマリです。


自分好みの食器、自分だけの靴、自分だけのバスタオル、自分の名前宛てに届く公共料金の請求書。実家暮らしとは違うほんのちょっとたまに乱れる生活リズム。ここは自分だけのお城。


リア充満喫、一人暮らし万歳。


だけど時々人恋しくなったりするのです。


寂しさを紛らわすかのように誰かを応援したくなる。この人も頑張ってる、私も頑張ろうって勝手に親近感。そうやって路上パフォーマーやアーティスト、駆け出しのデザイナーに出会うと、なんだか応援したいような衝動にかられるのです。


「頑張ってください」


その言葉はまるで自分自身にも言っているかのように。


アートも偶然い出会いから始まる

「アート」も同じです。


作品を好きになったら、どんな人が描いているのか知りたくなります。もしどこかに共通点があったら、より作品を身近に感じます。


ギター

アートを手に入れよう、と意識するとハードルが高いように思うかもしれません。ですが、アートもつまりは偶然の「出会い」から始まります。


何かのきっかけでふと目に留まる。旅先で。あるいは日常の中で。あるいはこのWASABIのサイトの中で。そしてこんな風に感じたのです。


なんだかわからないけれど、その絵に呼び止められたような気がした。


突然、偶然に、路上でギターを弾くミュージシャンに出会うのと同じなのかもしれません。


こうして、手に入れることになった1つのアートは、安かろうが高かろうがあなたの人生に、その空間に大きな意味をもたらします。あざやかな色彩。吸い込まれるような求心力のある絵。


ワンルームのお部屋に飾るならどこがよいと思いますか?


玄関?


狭いし、靴でごちゃごちゃしているし、照明も暗いし、あんまり適切じゃないかな。じゃあ、トイレ?んーなんだかこの絵に失礼なような気がする。


もうちょっとこう、ちゃんと「魅せる」場所においてあげたい。するとそう、やはりリビングです。リビングといいつつ、ワンルームですから、ダイニングでもありベッドルームでもあるわけですが。


ベッドやソファの背面、もしくはキャビネットなどの上部にある程度の壁面空間があれば、そこが理想的なフォーカルポイントとして絵やアートを飾るのに最適な場所です。


ですが、ワンルームのインテリアは、コンパクトな空間に家具を配置していますし、窓があって思うように絵を飾れる壁面が見当たらない場合もあるでしょう。


ですから、実はワンルームにアートや絵を飾る時には、細かいルールは気にせずぜひ「視界に入る」場所を探して置いてみてください。


本棚に。レコードジャケットを見せるような感覚で。


フローリングに直置きで。アーティストのアトリエのように立てかけて。


テレビの横に。フォトフレームを置くように。


ドアに。クリスマスリースを飾るように。


絵を見つけたときの感情、出会いとストーリーを思い出せるように、いつも視界に入る場所に置いてほしいと思います。 例えばこんなふうに。



***

ある一人の若者が、始発電車に乗っていました。


今日も一晩中、駅前でギターを弾いた。足をとめて真剣に耳を傾けてくれる人はおらず、酔っぱらった女の人が酔っぱらった勢いで3,000円を置いて行っただけだった。売れたい。売れたい。売れたい。僕の歌を聴いてもらいたい。朝日に照らされた玄関のドア、帰ってきたのはワンルーム。


殺風景な部屋の壁にたてかけた1枚の絵を見る。


この絵を買ったとき・・・


綺麗な色に惹かれてしばらく見とれてしまったことを思い出す。
作家が自分と同じ長崎出身と言っていたことを思い出す。
冬に見つけたんだなんてことを思い出す。
この絵のようにビビッドに生きたいと思ったことを思い出す。
あの日に僕はここで歌うと決めたことを思い出す。


僕はまだ頑張れるさ。


***



ワンルームに絵を飾るなら、その絵は、あなたの心がふるえるものであったらいいなと思います。


インテリアのテイストにとらわれすぎず、設置場所のセオリーにとらわれすぎず。 いつも目に入る場所に置き、暮らしに寄り添ってくれたらと思います。


そして年月が経ち、住まいが変わっても、あなたを変わらない姿で迎えてくれる。 それが部屋にアートを飾ること、そのものなのです。

 

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