2017.6.20

アート探訪

ノルタルジーを掻き立てられる、シンプルな版画の数々。
進路を変えてまで学んだ版画の面白さとは?
版画家・ヨシオカノリエインタビュー

WASABI責任者 平山 美聡

ペン

WASABI責任者 平山 美聡


どこかノスタルジックで、遠い過去の光景を思い出させるようなヨシオカノリエの版画。
大学時代に版画に魅せられ、版画家への道を歩き出したヨシオカが語る、ディープな版画の魅力とは?
アーティストの素顔、迫ります!



日芸入学後、油絵から版画専攻へ


吉岡さん、今日はよろしくお願いします!
吉岡さんとは、吉祥寺の画廊での個展でナンパさせていただいたのがご縁ですね(笑)




そうですね(笑)
その節はありがとうございました!




あの時、すごく優しいけどどこか寂しげな絵に惹かれたんですが…吉岡さんは「画家」ではなく「版画家」で、あれは絵ではなく版画だったんですよね。私版画家っていうと、棟方志功とかが思い浮かんでいたので、あの個展は衝撃でした。




ありがとうございます!
個展での作品を版画というと驚かれる方も多かったですね。



juliet


吉岡さんは日本大学芸術学部を出られてますが、もともと「絵」というか「版画」に興味があったんですか?




版画に興味を持ったのは大学に入ってからです。 小さい頃からものづくりはすごく好きでした。ずっと表現し続けたい、と思ったので自然と美大を目指しましたね。




美大受験って一口に言っても、すごくハードルの高いイメージがあります。
私自身一度目指しかけて諦めました(笑)受験、難しくなかったですか?




そうですね、高校では学校帰りに美術の予備校に電車で通っていました。木炭デッサンや油絵を習ってましたね。 私は広島県でも田舎の出身だったので、予備校のある市内に行くだけで緊張しました(笑)
予備校も学校も豊富にある東京の子は羨ましかったですね〜。



juliet


最初美大を受けられた時は、版画専攻を選ばなかったんですか?




そうですね、最初は油絵で入りました。私も初めは版画といえば、小学校の美術のときの木版画の印象が強かったです。
でも大学に入ってから、コースを選ぶことが出来たので取り組むきっかけがもらえたのはとてもよかったです。




そうなんですね…
そのまま油絵に進みそうなものですが、版画やってみようかなって思ったきっかけはなんですか?




授業でお試しでやってみる機会があったんです。その時に、プレス機に通した瞬間に紙に作品が浮かび上がるのがとても楽しかったんですよね。それと、日芸は版画に熱心な先生が多かったですね。




先生が熱心だといいですね!
その後、大学院まで進まれて版画を学ばれてますが…これほどまでに学びたいと思ったんですか?




もっとやってみたい、学びたいと思いました。版画は描くだけじゃなくて、技術も必要な部分がかなりあります。その 職人的な要素にも私は惹かれました。


ディープな版画の世界をレンコンで語る


ちなみに私、版画の技術ってまったく分からないのですが…吉岡さんはどのように作品を作っているんですか?




学生の当時は試行錯誤して、いろいろな技法を試しましたが、現在はリトグラフを専門にしています。




リトグラフ…?
吉岡さん!!!版画の種類、教えてくださいっ。




わ、わかりました!
ではちょうどいいので、このレンコン型のコースターで例えてみましょう。



juliet


まず銅版画です。
これは凹版(溝の部分にインクをつめる)とも呼ばれます。 凹版のなかにも直刻法と腐蝕法の二種があり、さらにさまざまな技法と名称があります。
直刻法のひとつ、エングレーヴィングはお札の原版作成に使われている技法です。 腐蝕法のエッチングではレンブラントやシャガール、ゴヤなども作品を残してますね。




なるほど。
一番馴染みがありますね。




エッチングを少し細かく説明すると、銅板をニードルで彫って、酸の液体につけて、銅板を腐蝕させます。そして溝を深くして刷るのですが、溝の深さで濃淡が変わります。溝の深さは酸の液体に浸ける時間で調整します。
レンコンでいうと…



juliet


レンコンの穴が作品として刷り上がります。




わかりやすい。




続いて木版画です。
先ほどとは逆の凸版(出ている部分にインクがのる)ですね。
木の板を彫刻刀で彫って作品作りをします。必要な線や面を残し、不必要な所は彫っていきます。有名な木版作品は浮世絵や棟方志功の作品でしょうか。
レンコンでいうと、レンコンの形そのものが刷り上がります。




なるほど。




そして孔版のひとつシルクスクリーン
孔は穴を意味するので、文字通り穴をインクがすり抜けた所が作品として刷りあがります。 こちらもレンコンでいうと穴の部分が出てきます。
有名な作品だとアンディ・ウォーホルのマリリンモンローやキャンベルスープですかね。




あ、マエダさんがやってますね。
平面ぽく見えて独特で面白いですよね。


juliet

最後に、平版のリトグラフです。
昔は石灰石を使っていたので石版画とも言われます。ちなみにリトグラフのリトは石を意味します。マネ、ドラクロワ、ゴヤ、ルドンなど多くの作家がこの版種で作品を残しています。
現在はアルミ板が主に使用されます。アルミ板に専用の描画材で描き、薬品処理したのちにインクをのせて、刷っていく技法ですね。
例えばこの絵は3版使っています!



juliet


重ねているんですね!
大変…




アルミ板に書いて、上から重ねて刷っていきます。重ねる瞬間にずれてしまうと作品として成り立たないので、多めに刷って挑戦します。



juliet


出来上がりは反転しますよね?




そうですね!なので出来上がりを予想しながら描くことが大事です。




直接絵を描くことと何が違うと思いますか?




水を含んだスポンジでぬぐったりプレス機を介したりするので、絵描いたものの紙への馴染み方が違います。直接描いたものとは異なる版画特有の密度が作品に生まれるんですよね。さまざまなアプローチがあって面白いですね。逆にヤスリで版面をけずってみたりとか。



juliet


なるほど〜。
確かに文字通り紙にインクが刷り込まれている感じがします。




それと、版を分けているので、途中で、色味がイメージと違ったら「次は別の色を重ねてみようかな?」とトライすることもできます。イメージの転換がしやすいですね。
直接絵を描くのが足し算だとしたら、版画は足し算や引き算、掛け算に割り算と混ざった式を解いている感覚ですかね(笑)


温かみと寂寥感を感じる、柔らかい版画


吉岡さんの作品って、あったかいモチーフが多いですけど、ちょっと切ない感じがします。この独特の色合いもあるんでしょうけど、私すごくツボです。
ものをすごく丁寧に描き出されている気がします。



juliet


ありがとうございます。
イメージ的に温かさは盛り込んでいきたいんですが、はかなげだったり寂しそうだったり、陰のある感じが魅力につながるのではないかなと思っています。




陰のある感じはあるんですが、不思議と体温を感じます。それに、ちょっと外国の感じがします!開放感というか。




日頃からアイディア収集してますが、海外にいく機会があったときは常にイメージやモチーフを探すようにしていますね!
場所を訪れたり、人と会ったりして価値観が変わったり、そういう日常の面白さを意識してみるっていうことをテーマにしています。最近のシリーズでは生活の中や旅先で見つけた何気ないものを作品にしていますね。




なるほど。
だからですかね、人は描かれていないんですが、何か生き物の温かみを感じます。




人を直接的描きはしていないのですが、人の気配を作品の中に残せるような作品作りを心がけています。とても嬉しいですね。




今後トライしていきたいモチーフはあるんですか?




現在は洋館だったり海外のテイストを取り込もうとしていますが、逆に日本の和の魅力を作品に転換していきたいですね。日本のシンプルなものの形や美しさを伝えていけたらいいな、と思います。



juliet


和のテイストの吉岡さんの作品、是非見てみたいですね!! 今後の目標はありますか?




今後も版画家としてたくさんの作品を発表していきたいですし、海外のギャラリーで作品発表をしてみたいです。日本ではない、新たな出会いがありそうで見てもらえる人の感じも違うでしょうし。
見てもらえる場をどんどん広げていきたいですね。




吉岡さん、ありがとうございました!!






 

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